今年も細田守の夏がやってきた! 『時をかける少女』が描き出す“不可逆な時間”の美しさ
今年も細田守の夏がやって来た。
2021年公開『竜とそばかすの姫』が大ヒットし、今や夏の風物詩となった『サマーウォーズ』、4月より劇団四季でミュージカルが上演中の『バケモノの子』などを手掛けた細田守監督。フリーに転向後、初の監督作となった『時をかける少女』が、7月1日21時より『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送される。
主人公の紺野真琴は、突然の出来事により過去へと移動できる「タイムリープ」という能力を手にする。何度でも失敗をやり直せる力を手にして、自分にとって都合の良い方向へと出来事を操る真琴であったが、級友の間宮千昭が隠していたある真実を知って事態が変わり始める。
原作は筒井康隆の同名SF小説。1967年に刊行された小説をおよそ40年後にアニメーション映画として蘇らせた。
40年という時の流れを踏まえて思うのは、本作が「不可逆な時間」を大きなテーマとして描いているということだ。主人公の真琴が手にしたタイムリープの能力は過去に戻ることができる力だが、現実で時を巻き戻すことは不可能である。誰しもが1度きりしかない過去を通過し、今を生きているのであり、本作はそういった「一瞬」の刹那性や輝かしさを描いている。
このテーマについて語るとするならば、キーパーソンは彼女の級友である間宮千昭だろう。彼には重大な秘密があり、その秘密を真琴に明かすことで物語は大きく動き始める。
千昭が真琴に真実を伝え、街がストップウォッチをかけたように停止する一連のシークエンスは、本作における河川敷での名場面に先立つ裏付けのような立ち位置だ。群衆でごった返す交差点を、千昭は人の間を縫うように歩いていく。しかし群衆たちは動いていない。すべて停止しているのだ。
そして千昭はすべてを真琴に話し終わり、彼女に別れを告げる。手を振る千昭と、引き止めようとする真琴。しかし時は無常にも進みだし、動き始めた雑踏の中に千昭は消えていくのだった。
このシーンには特に強く「時の刹那性」を感じる。停止する群衆など本来はありえない。常に流動する人の流れの中に消えていく千昭を追いかけようにも、人ごみにまぎれた彼を見つけ出すことはできない。そうして時というものは無常にも過ぎ去っていく。