『ちむどんどん』暢子が初めての恋愛感情に“わじわじ”? 朝ドラヒロインが恋に落ちる瞬間
どうやらようやくヒロイン・暢子(黒島結菜)が和彦(宮沢氷魚)への想いを自覚し始めるような予告シーンが見られた『ちむどんどん』(NHK総合)。
和彦には新聞社の同僚で恋人の愛(飯豊まりえ)という存在がいるため、その2人の掛け合いを見て、恋に鈍感な暢子も何かしら気に揉むことがあったのだろうと察するが、きっかけはそれだけではないだろう。暢子は2人が一緒にいるところをこれまでも幾度となく目にし、一緒に食事をしてきたのだから、何か他の出来事が重なるのだろうか。
朝ドラ前作『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)では、2代目ヒロインのるい(深津絵里)が後の夫・錠一郎(オダギリジョー)と恋に落ちていく過程がとてもエモーショナルで印象深かった。最初はクリーニング店の従業員と利用客という関係だった2人だが、洗濯物から職業も生活スタイルも何も見えてこない錠一郎のことをるいは“宇宙人”と名付けていた。そこからジャズトランペッターであることがわかるも、錠一郎が演奏した「On the Sunny Side of the Street」がトリガーとなり、心の奥底にしまっていた母・安子(上白石萌音)との思い出が呼び起こされ混乱してしまったるいは思わず錠一郎に「あなたのせいで、余計なこと思い出してしもた」と口走る。
しかし、その数日後、夏祭りで子どもたちと戯れる錠一郎の姿を自然と目で追ってしまっているるいの描写は愛らしく、彼がたこ焼きを食べ損ね、真っ白なTシャツにソースをつけてしまうのを見るなり、クリーニング店の2階から彼の元に駆けつける。人との距離に慎重なるいが頭で考えるより先に体が動くこのシーンは、まさに彼女の中に芽生えた恋心を雄弁に物語っていた。
そして何よりるいが母親についてのほろ苦い思い出を打ち明けると錠一郎は優しくその想いを受け止め「そうか。会いたいんやな、お母さんに」と呟く掛け合いが見られた。るいの生い立ちを悲観するでも同情するでもなく、その裏にある本人もまだ言葉にできていない本心を優しく突く錠一郎。この瞬間、彼らの間でだけ共有された何かが生まれたのを感じた。
口ではそれを認めなかったるいだが、体が先に動いて恋の予兆を手繰り寄せたるいが、頭でもそれを理解し始め心がじんわり温かくなるようなシーンだった。この時にはまだ明かされていないが、るいと錠一郎にはそもそも地元・岡山で繋がりがあったわけだが、知らぬうちにでも同じ原風景を持っている者同士というのはやはり特別で安心感を抱きやすいものだろう。