『ちむどんどん』暢子、智、和彦、愛の会話で繰り広げられた「男と女」
『ちむどんどん』(NHK総合)第53話では、兄・賢秀(竜星涼)から「何があっても謝らない。お礼も言わない」というアドバイスを受け、暢子(黒島結菜)は心新たにシェフ代行に励む。
しかし、兄のアドバイスに従う暢子の振る舞いは効果的ではない。「ズッキーニが納品できない」と連絡が入り、暢子は来週のメニューを変更するために矢作(井之脇海)らに協力を仰ぐ。暢子は「これはシェフ代行の命令です」と強気に出るが、協力的でない矢作は「女のシェフなんか無理に決まってんだろ」と口にした。「うちはシェフ代行の時は男のつもりです!」と言い返した暢子だが、矢作らの心は動かない。
SNS上では、本作のトラブルメーカーである兄・賢秀のアドバイスを忠実に実行してしまう暢子に対するツッコミが見受けられた。本作ではこれまで、暢子ら登場人物が大々的に失敗しては、その経験を通じて成長していく様が描かれているので、この失敗が暢子を成長させるきっかけなのは明らかだ。
房子(原田美枝子)に「このままだとシェフ代行失格」と言われた暢子は、その答えを見つけられずにいるが、実は暢子は自分で答えを口にしている。三郎(片岡鶴太郎)から房子について問われたとき、暢子は「オーナーはオーナーです。男とか女とか言うよりも」と笑顔で答えている。三郎の「ポークと卵みたいなもんだよ」という例えにはピンと来ていない暢子だが、「自分らしさ」という答えに気づくまでそう時間はかからないだろう。とはいえ、まずは寝坊して遅刻するという大失態への対応が先だが。
第11週のタイトルは「ポークとたまごと男と女」。第11週はジェンダーに関する話題が盛り込まれているが、暢子と智(前田公輝)、和彦(宮沢氷魚)と愛(飯豊まりえ)のやりとりには考えさせられる。
和彦が「男の都合で女を『専業主婦』という型にはめるべきじゃない」と言う横で、愛が食事を取り分ける。愛の行動は「女だから」というよりは周囲を思いやっての行動にも感じられるが、和彦が話している横で、という演出に少し心がざわつく。愛は「男の人の方がいっぱい食べると思って」と、智と和彦の方にポークを多く取り分けた。智は「男は、女より体がでかい。たくさん食べて、当たり前」と言う。暢子の「うちは男よりたくさん食べる!」という返答にも引っかかりを覚える。視聴者にジェンダーバイアス、「男らしさ」「女らしさ」など、男女の役割についての固定的な観念を考えさせるための演出だろうか。三郎が「ポークとたまご」の例えを出したとき「どっちが上か下かじゃねえだろう?」と言っていた。第11週で導き出されるであろう答えは「自分らしさ」だが、本作が描こうとするジェンダー観について、今後の演出が気になる。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK