『キセキ』は日本代表俳優の誕生秘話だった?  菅田将暉、横浜流星、成田凌、杉野遥亮の今

『キセキ』グリーンボーイズの今

 後から見返した時に、よくぞこのメンツが一度に揃ったな、と改めて驚嘆する作品が時々ある。2017年に公開された『キセキ ーあの日のソビトー』(以下、『キセキ』)も、まさにそんな作品のひとつだ。

 本作は、実在の顔出ししていない音楽グループ、GReeeeNのメンバーの実話をもとにした青春ドラマ。主人公ヒデ(菅田将暉)が家族や兄弟との葛藤を繰り返しながらも、歯医者とミュージシャンというふたつの夢を追いかけ、GReeeeNの大ヒット曲、「キセキ」が生まれていくまでが描かれるのだが、登場している俳優陣を今見ると、松坂桃李と菅田将暉が兄弟役でのダブル主演、横浜流星、成田凌、杉野遥亮と、この顔ぶれこそがキセキ! と叫びたくなるキャスティングなのだ。

 菅田将暉、横浜流星、成田凌、杉野遥亮の4人は映画の公開とともに、劇中で演じたグループ“グリーンボーイズ”としてCDデビューも果たした。『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演するなど、短期間ではあるがグループとして活動し、惜しまれながら活動終了した。そして2022年現在、この4人の俳優たちの活躍ぶりがすさまじい。

 そもそも、松坂桃李と菅田将暉のW主演というだけでも贅沢、眼福なのだが、進路に迷いながらも歯医者とミュージシャン、両方をやっていくと決意するヒデを演じた菅田将暉は、この作品が公開された2017年の時点では、ドラマ『民王』(テレビ朝日系)や、映画『ディストラクション・ベイビーズ』での演技が評判とはなりつつも、まだ頭角を現している、かなり気になる若い俳優という印象だった。だが、その後の躍進と出演作品数は群を抜いている。

『花束みたいな恋をした』(c)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

 ドラマでは『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)の熱い教師、『MIU404』(TBS系)での忘れがたい正体不明の男・久住、そして記憶に新しい『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)の、お喋りでなぜか事件を解決していってしまう学生、久能整。映画では『帝一の国』の本気で総理大臣を目指す高校生から、『キャラクター』の追いつめられる漫画家、『花束みたいな恋をした』の、現代を生きている本当にごく普通の若者などなど、枚挙にいとまがない。

 彼はマンガ原作などの、現実的ではないアクの強い役をリアルに感じさせるのも上手いし、そういう役がどうしても記憶に残りやすいが、実はごく普通に暮らしている人の役を演じた時の“普通”感を出すのもとても上手い。『キセキ』のヒデはその最たるもので、特に映画前半では、ちゃんと弟の顔、子供の顔つきをしていた。この5年ですでに怪優と呼べそうな俳優に進化している。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる