『チャッキー』衝撃復活! 過去の謎も解き明かされる? シリーズ新時代へ突入

『チャッキー』シリーズ新時代へ突入

 本シリーズの主人公は、14歳の青年ジェイク(ザカリー・アーサー)。人形を集めてアート作品を作ることが趣味の彼は、学校でも少し浮いていて、いじめられている。母親が他界してから父と二人暮らしのジェイクだが、父親はゲイであるジェイクを受け入れられない様子で、飲酒をすると気性が荒くなる。従兄弟のジュニア(テオ・ブリオネス)も意地悪で、何より彼が付き合っているレクシー(アリヴィア・アリン・リンド)が相当ひどい性格の女の子だ。唯一、ジェイクが密かに良いなと思っている犯罪オタクの男の子・デヴォン(ビョルグヴィン・アルナルソン)だけが優しいものの、彼もレクシーが酷いやつだと知っていながら彼女のパーティに行くなど、その辺はみんな14歳だからこその甘さや未熟さ、弱さを持っている。しかし、そのティーンの危うさが『チャッキー』の肝でもあるのだ。日本で言えば“中二病”のいじめられっ子の元に、ある日チャッキーがやってきて「いじめっ子を殺してやる」と言ったら? 子供ほど怖がらず、大人ほど精神が強くない存在が手にするチャッキーは、もはや“兵器”である。

 邪悪な誘い文句で精神が不安定なティーンを惑わせ、殺人者に育てようとするチャッキー。本作ではチャッキーの魂である、チャールズ・リー・レイがなぜ殺人鬼になったのか、幼少期からの過去がついに明かされる。そこには、彼が“後世育成”をしようとするヒントが隠されており、今シリーズの物語にちゃんと「なるほど」という納得感を持たせてくれるのだ。

 しかも、クィアの主人公が同性の同級生に恋をする様子がごく普通に描かれたり、SNS世代特有のいじめを描いて、いじめられた側が同級生に殺意を持って実行しようとすることのたやすさを主張したりと、時代性を感じさせるテーマと80年代のホラーアイコンが素晴らしい形で共存している点が面白い。また、『ゴシップガール』や『ユーフォリア』など若い世代が好むアーティストらの曲を1つのエピソードの中で多用するMV的な演出も、新世代へのフックとなるアプローチに感じる。例えば、子供たちが、親が留守の子の家でパーティをするという“あるある”シーンが劇中に登場するものの、騒音のDJで盛り上がるのではなく、各々のヘッドフォンで音楽を流す今どきのサイレントクラブ仕様になっていて、そういう細かいディテールのアップデートも観ていて楽しい。

 本作はある意味“ティーン向け『チャイルド・プレイ』”ではあるが、しっかり登場人物が惨い死に方をするし、他シリーズに比べて死体の量が減っているわけでもない。80年代からフランチャイズを愛するファンが盛り上がるスペシャルゲストも複数登場するなど、ファンサービスの良さもピカイチ。すでにシーズン2の制作も決定しており、米国でも高評価だったテレビシリーズ『チャッキー』。全8話という短さも相まって非常に観やすくなっているため、ぜひ楽しんでほしい。

■配信情報
Huluプレミア『チャッキー』 シーズン1(全8話)
Huluにて、6月24日(金)全話一挙独占配信(字・吹)
出演:ザカリー・アーサー、ビョルグヴィン・アルナルソン、アリヴィア・アリン・リンド、 テオ・ブリオネス、ブラッド・ドゥーリフ
脚本・製作総指揮:ドン・マンシーニ
(c)2021 Universal Content Productions LLC. All Rights Reserved. 

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる