『ちむどんどん』再び離婚を求める良子 暢子との関係にも垣間見える彼女の良さと悪癖

『ちむどんどん』良子の良さと悪癖

 NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』の第11週で物語が大きく動きそうな、暢子(黒島結菜)と良子(川口春奈)。この二人といえば、暢子が高校3年性の時にした大喧嘩が印象的だった。東京行きを諦めざるを得なくなった矢先に内間食品に就職を決めた暢子。しかし、親友の早苗(高田夏帆)が東京の大学に合格して上京が決まったことで、「なんで自分は……」というフラストレーションが溜まっていた。なんとなく目の前のことに身が入らない彼女は、支度した夕飯の味付けも薄く、良子から詰められてしまう。

 この時の良子の暢子に対する接し方から思うのは、彼女が母・優子(仲間由紀恵)に代わって“言わなければいけないこと”を言う役周りになっていたことだ。借金がどうにもならず、一人がワガママを言ってもいられない状況で「春休みは今年も名護の工場でアルバイト。大体東京に行くお金がどこにある?」と暢子を叱る。確かに、一理ある。ただ、正しさはさておいて暢子が夢を諦めなくなったこと自体への失望の気持ちを汲み取ってあげることができずに、「わかる? 4月から社会人、毎朝バスに乗って仕事だよ」や「寝ぼけたこと言わないで」と必要以上に相手の神経を逆撫でするような、きつい言葉を返す悪癖が良子にはあった。しかし、それと同時にそれを自覚し、「きつい言い方かな?」と気にする描写もあったのが救いである。

 彼女が他人に厳しいのは、自分にも厳しいからだ。暢子と同じように、彼女も「教師になる」と、将来の夢など信念を強く持ち、それを実行に移すキャラクターとしてここまでやってきた。ただ、暢子になくて良子にあること、それは忍耐と努力である。良子は誰に言われるでもなく、自分の夢を自分で叶えるために、自ら進んで毎日勉強に励むなど努力をしてきた。それが報われて、教師という仕事を勝ち取ったのである。

 一方、暢子はシェフとして「ストーブ前」を度々任されるようになり、ついには骨折した二ツ橋(高嶋政伸)に代わり、シェフに任命された。しかし、それに対して周囲の人間が疑問を持ったり、納得できなかったりするのは当たり前だ。なぜなら、良子のように暢子はこれまで、自分が料理人になるうえで自ら進んで色々なことを勉強したり、練習したりする努力の描写があまり描かれてこなかったからである。加えて、性格はどちらかといえば良子ではなく兄の賢秀に似ていて、すぐに文句を言ったり、反抗的な態度を取ったりもするのだ。暢子の東京行きを巡って後日、良子が校長先生から給料を前借りした時も、「いつもつまらないことで喧嘩ばかりしている」と話していたので、ああいった口論は日常茶飯事だったのかもしれない。

 一時期は仕事の給料を家に入れることで自分が同世代の女の子に比べ、自由に遊びに行ったり、洋服を買ったりして楽しむことができなかったことへフラストレーションを感じていた良子。それでも、彼女はいっとき自分のためにお金を使ったことを後悔し、それ以降は我慢に我慢を重ねた。なので、彼女の暢子並びに他の人に対する厳しさには、“私だって我慢してきたのだから、苦労したのだから”と、相手に同じことを求めている気を感じさせる。良子がその後、自分のために「ワガママ」をしたのは、家のためにお金持ちの喜納金吾(渡辺大知)との結婚を蹴って、石川博夫(山田裕貴)と結婚したことだ。ところが、そんな博夫とも子供が産まれたことを機に関係が悪くなる。

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