『トップガン マーヴェリック』に込められた“続編”以上の意味 トム・クルーズの集大成に

続編以上の『トップガン マーヴェリック』

 1996年の『ミッション・インポッシブル』以後、ほぼ全ての出演作をセルフプロデュースしてきたトム・クルーズは、映画スターであると同時に“映画作家”である。戦闘機にIMAXカメラを搭載して撮影したという驚異的な飛行シーンは、映画館のスクリーンでこそ体験できるスペクタクルだ。ジェニファー・コネリーらベテランから、マイルズ・テラーを筆頭にしたエネルギーあふれる若手まで素晴らしいキャストが集められ、『オブリビオン』でもタッグを組んだジョセフ・コシンスキー監督がまとめ上げた。トムはパンデミックによって苦境に立たされた映画館を救うべく、然るべきタイミングまでこの続編の公開を延期し続け、そして万全のプロモーション体制をもってキャリア史上最高の大ヒットを飛ばしたのである(公開直前に来年公開の『ミッション・インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の予告編をリリースするダメ押しっぷり)。

トップガン マーヴェリック

 本作は最高の映画を作るという、ある種の“不可能任務”に挑み続けてきた映画作家トム・クルーズについての自己言及的映画とも見える。長らくトム出演作の脚本やノンクレジットのリライトを手掛け、今やMIシリーズの監督でもあるクリストファー・マッカリーの存在は無視できないだろう。本作でも製作、脚本を手掛ける重要なクリエイティブパートナーである彼の存在が、『トップガン マーヴェリック』に大ヒット作の続編以上の意味を持たせたのではないだろうか。

 マーヴェリックの36年とはトム・クルーズの36年であり、その哲学は時に古風にも映るかも知れない。しかし飛び続けることはかくも美しい。『トップガン マーヴェリック』はトム・クルーズが“Right Stuff”を持った最後の映画スターであることを証明する、集大成である。

■公開情報
『トップガン マーヴェリック』
全国公開中
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:クリストファー・マッカリーほか
製作:ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー、デヴィッド・エリソン
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、ヴァル・キルマーほか
配給:東和ピクチャーズ
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