ディズニープラスがついにNetflixを超える? 国内外で今、大きく伸びたワケ
新ブランド、スターのローンチにより日本でも配信作品が拡大
日本ではサービス開始から長い間、様子見のユーザーが多かったように思う。2019年にNTTドコモと提携し、「ディズニーデラックス」としてサービスを開始した当初は、視聴できる作品数が限られていた。ディズニー、ピクサー、マーベル、『スター・ウォーズ』シリーズは見放題だが、逆にそれ以外のコンテンツはあまり充実していなかったのだ。また本国アメリカのディズニープラスでは『マンダロリアン』(2019年~)などのオリジナルコンテンツが続々とリリースされていたのに対し、日本のディズニーデラックスではそれらの作品がなかなか配信されず、混乱していた時期もあった。しかし2020年6月11日から、「ディズニーデラックス」の映像コンテンツは「ディズニープラス」に統合。これによって注目のオリジナルコンテンツが日本でもアメリカとほぼ同時に視聴できるようになり、特に『スター・ウォーズ』やマーベルの熱心なファンは安心して加入を決めることができた。
しかしやはり“熱心なファン”以外のユーザーからは、Netflixをはじめとする他のサービスに比べて作品数が少ないと評価されていた。そんななか、ディズニープラスは2021年10月に新ブランド、スターをローンチ。これは、ディズニーの傘下であるFXプロダクションズや20世紀スタジオ、サーチライト・ピクチャーズなどの作品をまとめたブランドで、約16,000タイトルもの膨大な作品がディズニープラスのラインナップに追加された。さらにこれと同時に決定したのが、TBSとの協業だ。スターがローンチされた10月27日から、同年7月からTBSで放送されていたドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』の世界配信が開始。2022年6月現在も、日曜劇場『マイファミリー』(TBS系)や『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS/TBS)など、テレビで放送中のドラマを見逃し配信している。さらに2022年3月には日本テレビとも戦略的協業に合意し、まずはドラマ『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)の世界配信を開始した。TBSや日テレにとっては海外市場への足がかりとなるディズニープラスとの協業だが、ユーザーにとっても国内作品の充実はうれしい。TBSはParavi、日テレはHuluでストリーミングサービスを提供しているが、ユーザーはディズニープラスにさえ入っていれば両方観られるとなれば利用しない手はないだろう。今後ラインナップが増えてくれば、さらに加入者数は増えると予想される。
スターのローンチにともなって、国内アニメの配信数も格段に増えた。こちらは国内実写作品よりも数が多く、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』、『僕のヒーローアカデミア』などの人気作品が追加され、現在は独占見放題として『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』、SFサスペンス『サマータイムレンダ』、そしてジョージ浅倉原作の『ダンス・ダンス・ダンスール』を配信中だ。また、独占ではないものの『SPY×FAMILY』や『パリピ孔明』など今期の注目作・人気作も配信されている。コアなアニメファンではないが、話題の作品はチェックしておきたいというユーザーにはちょうどいいかもしれない。
ディズニープラスはピクサー、マーベル、『スター・ウォーズ』など、自社の強力なブランドのオリジナルの作品を配信することで、動画ストリーミングサービスの熾烈な競争のなかで他社を圧倒する数字を叩き出した。これは、もともと数多く存在していた各ブランドのファンをガッチリと囲い込むことに成功した証拠だ。また2021年に新ブランド、スターをローンチしたことで、配信作品数は飛躍的に増加。先にあげたブランドの熱心なファンというわけではない層にも届く幅広いラインナップを実現したことも、さらに新規加入者数を増やした要因となっただろう。日本国内でいえば、テレビのリアルタイム視聴離れが進むなか、TBSや日テレと協業し、テレビ放送中のドラマやアニメの見逃し配信を開始したことでも注目されている。この動きは良質なコンテンツを増やしたいディズニープラス、世界進出を狙うテレビ局、そしてさまざまな作品を楽しみたいユーザーの3者すべてにとって有益な動きだ。
そもそも強いブランドを持つディズニープラスは、それだけで他のストリーミングサービスとは差別化できている。日本であれば国内作品を強化していくことで、さらなる加入者数増加が見込めるだろう。いまやNetflix も射程範囲内だ。今後の動向に注目していきたい。
参考
The Rundown: Disney crosses 205 million total streaming subscriptions as Disney+’s quarterly subscriber growth surpasses rival streamers
https://wired.jp/article/netflix-reckoning/
■配信情報
『オビ=ワン・ケノービ』
ディズニープラスにて、毎週水曜16:00〜独占配信中
監督:デボラ・チョウ
出演:ユアン・マクレガー、ヘイデン・クリステンセン、モーゼス・イングラム、ジョエル・エドガートン、ボニー・ピエス、クメイル・ナンジアニ、インディラ・ヴァルマ、ルパート・フレンド、オシェア・ジャクソン・Jr、サン・カン、シモーヌ・ケッセル、ベニー・サフディ
製作総指揮:キャスリーン・ケネディ、ミシェル・レイワン、デボラ・チョウ、ユアン・マクレガー
脚本:ジョビー・ハロルド
(c)2022 Lucasfilm Ltd.