『みらてん』『17才の帝国』でも好演 若手演技派としての立ち位置を確立させた山田杏奈
特に気になるのは、2019年と2021年の躍進ぶり。なんとそれぞれ1年で出演作が4、5本も公開されているのだ。そのうち、1作は主演(『21世紀の女の子』の「恋愛乾燥剤」)、そして『小さな恋のうた』、『五億円のじんせい』のそれぞれではヒロインに抜擢された。特に、爽快感ある青春映画の『小さな恋のうた』では、バンドメンバーの中で紅一点として存在感を発揮。劇中に披露した歌も心に響くものがあった。そして2021年に関しては5作のうち2作が主演、2作がヒロイン役。気がつけば、完全に邦画シーンを牽引する演技派俳優の一人になっていた。
主演作となる『樹海村』と『ひらいて』は、前者がストレートなホラー映画なのに対し、後者は青春映画なのに、やはりこちらもホラー的な雰囲気をはらんでいる。それは山田の演技力の高さゆえだろう。彼女が演じる主人公・愛は、クラスメイトの男の子・たとえ(作間龍斗/HiHi Jets)に片想いをし続けるも、付き合っている彼女がいると知ると、態度を豹変させる。スッと無表情になる瞬間の目の空虚感、不快感を隠そうともしないムスッとした表情など、感情の機微を表現するのがとにかくうまい。その歳特有の支配欲を持て余したような主人公を好演した。一方、『樹海村』では終始笑顔を見せない、無表情さが逆にピュアで、不思議な力を持っていることを周囲に隠し続けているという孤独な役柄だった。
彼女の得意とする、表情の使い方のうまさは同年公開の『彼女が好きなものは』でも大いに発揮されている。腐女子の三浦紗枝を演じる山田は、本作で高校生らしい可愛げな表情、そして少し疲れ切った顔と微細な感情の揺れを丁寧に表現した。ちなみに、同作と『樹海村』で神尾楓珠と既に共演しており、『17才の帝国』は三度目の共演となるわけだ。
『17才の帝国』で山田が演じるサチは、神尾演じる真木に憧れを抱き、ある日実験都市ウーアの総理大臣に選ばれた彼に総理補佐官になってほしいと頼まれる。他のメンバーが天才揃いでどこか年不相応なのに対し、山田は唯一年相応な等身大のキャラクターである。第1話も、彼女の視点で語らえており、実質本作の主人公といっても過言ではない。元気で、どこか抜けていて、頑張り方が空回りしてしまう天然っぷりは応援したくなるものだ。驚くべきは、そんなサチとはまるで正反対なミステリアスな雰囲気のユキも彼女が演じていること
。見事に1人2役をこなす山田、神尾との共演シーンもお互いの高い演技力をさらに高め合っているようなケミストリーを感じる。
そして『未来への10カウント』では、松葉台高校ボクシング部のメンバーの中でもいち早く強さを求める水野あかりを好演。『17才の帝国』のサチのようなふんわりと抜けているような雰囲気とは打って変わって、強張った表情で大人を睨み付ける目つきが印象的だ。彼女は父の死後、母親が再婚した男が別れた後もしつこく付き纏い、暴力を振るうので母を守ろうと強くなっていた。第3話はまさに水野の家庭環境、そして強くなりたい理由に焦点が当てられおり、ベテラン・木村拓哉との共演にも怯むことなく、やはり表情で水野の怒りや焦燥を表現する山田の才能が光っていた。
2022年にはまだ主演ドラマ『WOWOWオリジナルドラマ 早朝始発の殺風景』(WOWOW)の放送が控えるなか、7月期の日本テレビ系日曜ドラマ『新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~, 』への出演も決定。King & Princeの永瀬廉が主演を務める同作で、山田は戦国武将が居並ぶクラスで唯一“武将じゃない”普通の女子高生、日下部みやび役を演じる。実は山田にとって、これが初の民放ゴールデンプライム帯の連ドラにおけるヒロイン役。今後も彼女の活躍に一層期待できそうだ。
■放送情報
『17才の帝国』
NHK総合にて、毎週土曜22:00〜放送(全5回)
出演:神尾楓珠、山田杏奈、河合優実、望月歩、染谷将太、星野源ほか
作:吉田玲子
制作統括:訓覇圭
プロデューサー:佐野亜裕美
演出:西村武五郎、桑野智宏
写真提供=NHK
『未来への10カウント』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:木村拓哉、満島ひかり、安田顕、高橋海人(King & Prince)、山田杏奈、村上虹郎、馬場徹、オラキオ、坂東龍汰、佐久本宝、吉柳咲良、櫻井海音、阿久津仁愛、大朏岳優、山口まゆ、三浦りょう太、富樫慧士、八嶋智人、市毛良枝、富田靖子、内田有紀、生瀬勝久、柄本明
脚本:福田靖
演出:河合勇人、星野和成
ゼネラルプロデューサー:横地郁英
チーフプロデューサー:黒田徹也
プロデューサー:川島誠史、都築歩、菊池誠、岡美鶴
音楽:林ゆうき
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日