『明日、私は誰かのカノジョ』は実写化の成功例に 的確だった原作からの変更点
放送時間や話数に制約があるため、漫画原作のドラマはどうしても原作通りにはいかない。しかし、4月から放送開始した『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS/TBSドラマイズム、以下『明日カノ』) は、原作からカットされているシーンも少なくないものの、原作の旨味を踏まえたうえでスッキリ観ることができる内容になっている。原作とドラマの違いに触れながら作品の魅力を紹介したい。
まず、“レンタル彼女”として働きながら大学に通い、1人暮らしをしている苦学生・白井雪(吉川愛)がメインの第1話は、20代前半の会社員・辻壮太(楽駆)との絡みを軸に展開される。レンタル彼女サービスを利用して以来、雪に入れ込む壮太は、ホテル内の喫茶店で会社の商談をしている時、白髪交じりの男性とエレベーターに入る雪を偶然見かけ、動揺した表情を見せる。
ドラマではすぐに雪が大学で講義を受けるシーンに切り替わるが、原作ではその後、男性はエレベーター内で2人きりになったことをいいことに、強引に雪にキスを迫る。幸い、エレベーターが階に到着したことにより、キスは未遂に終わるが、嫌がる雪に発情した男性が顔を寄せる描写にはゾッとした。これまでドラマの定番だった「同意なきキス」は見直されているため、割愛されたのかはわからない。ただ、気軽に観られるドラマで、このシーンを見たら不快感を示す視聴者もいた可能性もあり、カットされて良かったように思う。
また、原作はレストラン、ドラマは水族館とシチュエーションこそ違うが、壮太が「ずっと彼女とかいなかったから、割と貯金はあるんだ」「俺、雪ちゃんにこの仕事してほしくない」とお金の話を持ち出し、自分のレンタル彼女を辞めて彼女になってほしいと迫るシーンがカットされなかったのは良かった。哀願する壮太に雪が淡々と「私は奨学金を借りながらこの仕事をして、なんとか1人で生活できている」「壮太君が言ってた貯金って親御さんが学費や生活費を出してくれたから貯めれたんだよね? それって壮太君のお金なのかな? 単なる貯金じゃなくて、ものすごくありがたいお金だと思って、ちゃんと自覚するべきだと思う」と一蹴する姿は見応えしかなかった。吉川のひょうひょうとした演技も相まって、原作とは違う緊張感を覚えた。
ちなみに原作では、壮太はめげずにレンタル彼女サービスを利用して雪に会い、今度は温泉旅行に誘う。この温泉旅行も心理描写が特に面白いが、ドラマ版の壮太は心が折れたのか、雪の前に現れることはなく、パパ活女子・リナ(横田真悠)がメインの第2話に進む。カットされたことは残念だったが、それほど雪の言葉の重さに壮太がに打ちのめされたことが伺え、原作とはまた違った魅力あるシーンに感じた。