『ヒヤマケンタロウの妊娠』箱田優子×菊地健雄監督対談 「自分の中の“当たり前”を崩して」
120点満点のキャスティング
ーー箱田監督、菊地監督に、脚本の方々の名前を見ても、ドラマシリーズですが、“映画”のチームが集結している作品であり、その魅力が存分に詰まっていると感じました。
菊地:撮影、編集、録音など、普段から映画を手掛けているスタッフの方々も揃っていて、日本の民放ドラマを作る感覚とはまた違ったものがありました。Netflixとやるのも初めての経験であり、この“(媒体の)差”みたいなものは正直まだ日本では数多くあるわけでもなくて。映画とも日本のテレビドラマとも違う“何か”というのは、僕は僕で格闘しましたし、箱田さんもすごく悩まれながら撮られていた印象です。
箱田:本当にそうですね。配信だからこその楽しみ方って、映画館やテレビドラマを観るのとまた違ったものがあるなって。ある種、この媒体だからこそできることが今回実現できているのかな、ということを完成した全話を観て思いました。悩みながら作りましたが、最終的にはとても楽しかったですね。
ーー役者さんの適材適所ぶりもすごかったです。
箱田:贅沢なキャスティングでしたよね。
菊地:僕らもキャスティングにだいぶ関与させてもらったのですが、こんなにイメージ通りの方々に演じてもらえるとは思ってもみなかったです。登場人物一人一人に注目していただきたいですし、そこで生まれたアンサンブルを堪能してほしいですね。桧山と亜季の価値観だけを伝える物語ではなくて、その周囲にいる人物それぞれの考え方、生き方を表現できるのが本作の面白いところで。このインタビューでもそうなんですが、テーマがテーマなだけに、どうしても“真面目”になってしまうんですが……。
箱田:そうそう。だから、私はどれだけふざけられるか、ということもずっと考えてました(笑)。
菊地:そうなんですよね(笑)。「男性の妊娠」ということがあって、それによって動かされる周囲の人物たちをまずは楽しんでもらいたいんです。そのためにもキャスティングは非常に重要でした。まずは頭をからっぽにして役者さんのお芝居で楽しんでいただいて、観終わった後に「自分の場合だとどうだろう?」と考えていただくような形だといいのかなと。そういった意味でも120点満点のキャスティングでした。それぞれのキャラクターの話をしだすと、三日三晩は余裕で話せると思います(笑)。
箱田:細川岳さんが演じた桧山の後輩・田辺とか、私は大好きなキャラクターで(笑)。本当にどの人物も愛おしいですね。
ーーそして、なんと言っても本作の真ん中に立つ、斎藤工さんと上野樹里さんが素晴らしかったです。
箱田:斎藤さんは、常に作品のことを考えてさまざまな意見を提案してくれましたが、そのどれもが素晴らしかったです。一方、上野さんはプレイヤーとして自分がどうあるべきか、というのに貪欲な方で。2人の役に対するアプローチがそれぞれ異なっていて、そこに2人が合わさることによって生まれる化学反応がこの作品らしく、とても良かった。現場で桧山だけを撮ってても違うし、亜季だけを撮ってても違うなと思っていたんですが、2人一緒のシーンを撮ったときは、「ああ、この作品ってこういう楽しみ方をする作品だよね」と実感できたのは嬉しかったです。「いろんな人がいろんな意見を持っている」ということを2人が体現しながら撮影できたので、そこをより楽しんでもらえたら良いなと監督として思います。
■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『ヒヤマケンタロウの妊娠』
Netflixにて、全世界独占配信中
出演:斎藤工、上野樹里、筒井真理子、岩松了、高橋和也、宇野祥平、山田真歩、リリー・フランキー、細川岳、前原滉、森優作、山本亜依、伊勢志摩、篠原ゆき子、橋本淳、小野ゆり子、木竜麻生、斉木しげる、根岸季衣ほか
原作:坂井恵理『ヒヤマケンタロウの妊娠』(講談社『BE LOVE KC』所載)
監督:箱田優子、菊地健雄
脚本:山田能龍、岨手由貴子、天野千尋
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix コンテンツ・アクイジション部門マネージャー)
プロデューサー:間宮由玲子(テレビ東京)、太田勇(テレビ東京)、平林勉(AOI Pro.)
企画・制作:テレビ東京
制作協力:AOI Pro.
(c)坂井恵理・講談社/(c)テレビ東京
公式サイト:www.netflix.com/ヒヤマケンタロウの妊娠