吉田羊×大泉洋、加瀬亮主演作など 国内外の受賞歴を誇るWOWOWドラマ

国内外の受賞歴を誇るWOWOWドラマ

 WOWOWでは「連続ドラマW」を中心に多くの連続ドラマが作られ、高い評価を受けている。だが、連続ドラマだけでなく単発ドラマにも傑作が多く、国内外で様々な映像作品の賞を受賞している。

『ドラマWスペシャル 人質の朗読会』

 たとえば、『愛を乞うひと』(読売テレビ・日本テレビ系)や『連続ドラマW 正体』(WOWOW)などのドラマで知られる谷口正晃監督が小川洋子の小説をドラマ化した『ドラマWスペシャル 人質の朗読会』。

 物語は南米のとある村で反政府ゲリラに人質にされた後、銃撃戦で命を落とした6人の日本人の音声を録音したテープが発見されたところからはじまる。亡くなった平澤咲子(大谷直子)の娘・ひとみ(波瑠)からテープを渡されたラジオ局記者の中原誠一(佐藤隆太)の視点で話は進み、人質となった一人一人の人生を追っていく。人質の間では朗読会がおこなわれており、そこで語られる朗読が、彼、彼女らの人生の物語として語られていく。

 抑制された映像で静かに進んでいくのだが、この見せ方が本作の世界観を的確に表している。第4回衛星放送協会オリジナル番組アワードでオリジナル番組賞、最優秀賞(ドラマ番組部門)と、第55回モンテカルロ・テレビ祭でモナコ赤十字賞とSIGNIS賞を受賞した。第43回国際エミー賞単発テレビドラマ部門にもノミネートを果たしている。

『ドラマW この街の命に』

『ドラマW この街の命に』

 次に『ドラマW この街の命に』を紹介したい。本作は、動物の殺処分と日々向き合う「動物愛護センター」で働く行政獣医たちの葛藤を描いた社会派ドラマ。撮影が山梨県にある動物愛護センターで行われたこともあってか、ドキュメンタリー的なリアリティがある作品で、実際に殺処分が行われる場面は観ていて苦しくなる。

 監督は『いつか読書する日』の緒方明。脚本も同作の青木研次が担当。主演は加瀬亮、共演に戸田恵梨香という、堤幸彦監督のカルト的人気を誇る刑事ドラマ・映画『SPEC』シリーズ(TBS系)でバディを組んでいた2人だが、演技のアプローチが正反対なので、見比べると面白い。人が動物を飼うということの意味について深く考えさせてくれる奥深いドラマだ。平成28年度(第71回)文化庁芸術祭賞テレビドラマ部門 優秀賞や平成28年日本民間放送連盟賞番組部門のテレビドラマ番組最優秀賞を筆頭に、多くの賞を受賞している。

『ドラマW 十月十日の進化論』

『ドラマW 十月十日の進化論』

 WOWOWが自社のテレビドラマで活躍するシナリオ作家を募集・育成するために開設したWOWOWシナリオ大賞を受賞した作品も傑作揃いだ。

 第7回WOWOWシナリオ大賞を受賞した栄弥生の脚本を『箱入り息子の恋』などの映画で知られる監督・市井昌秀がドラマ化した『ドラマW 十月十日の進化論』は、偏屈な昆虫分類学博士・小林鈴(尾野真千子)が妊娠したことによって心境が変化していく様子を描いたヒューマンドラマだ。

 物語の見どころは人として未熟だが愛おしい登場人物たち。主人公の鈴は行く先々でトラブルを起こすトラブルメーカー。本作は一見デタラメで理解不能に見える彼女の動向や考え方を、実父や元恋人といった周囲の人々の目線から優しく見守っていき、次第に視聴者にも彼女の気持ちが理解できるようになっていく。鈴を取り巻く人々も魅力的。中でも、ある理由から籍の入っていない実父の中村保(でんでん)と母・小林文子(りりィ)の関係がとても良い。東京ドラマアウォード2015単発ドラマ部門・優秀賞のほか、多数の賞を受賞している。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる