関水渚、綾瀬はるか以上に輝く探偵らしさ 『元彼の遺言状』ミステリドラマとしての課題も

『元彼の遺言状』関水渚の輝き

 出版社の顧問契約を篠田(大泉洋)が勝手に断ったことから、冷戦状態となった麗子(綾瀬はるか)と篠田。第1話での出会いから、麗子の大学時代の記憶にその存在が残っていなかった篠田。彼は一体何者なのか、前回のエピソードのラストで栄治(生田斗真)との会話が回想され、大学時代のサークルの先輩であったということが作り話であることが判明した。そして今回も冒頭で、篠田と栄治の“出会い”と思しき回想シーンが描写される。後半に進むにつれ、それは何らかのかたちを持ち、場合によってはメインプロットにも関わってくるのだろうか。

 5月9日に放送された『元彼の遺言状』(フジテレビ系)第5話。篠田は紗英(関水渚)に連れられ、麗子は津々井(浅野和之)に連れられて出席した投資会社M&Sキャピタルのパーティー会場で、場内が暗転したわずかな時間に投資家の男性が死亡する事件が発生する。首に注射痕が残っていたことから殺人事件であると断定する麗子と篠田。翌日、聴取のために警察署に向かうと、青いカーディガンの女性・美咲(遊井亮子)とすれ違う。彼女が事件の際に暗転してすぐにパーティー会場に入ってきた人物であると気が付いた紗英の一言から尾行を始める麗子。そして美咲はアクアショップの店員であり、1週間前に夫が亡くなったばかりであることを聞かされるのだ。

 パーティー会場で起きる死が発端となることでアガサ・クリスティーの『忘られぬ死』をフックとして導入し、やがて事件の全容が“交換殺人”である=パトリシア・ハイスミスの『見知らぬ乗客』へとつなげた今回のエピソード。名作ミステリへのオマージュ、あるいは目配せについてはこのドラマの個性として充分受容できる範囲である一方で、やはりまだミステリードラマとしてのいくつもの課題が散見しているように思えてならない。

 麗子が弁護士であるという職業性が今回ほとんど機能しなくなっており、“探偵もの”にシフトしつつあるのもその一因だ。もっともそれを自虐的にネタにしているあたりは潔いのだが、麗子の過剰なまでの自信があることがわかる以上、推理の説得力が弱く、相変わらずすべてを滔々と台詞によって片付けてしまうことによって画面的な見応えがかなり薄められてしまう。ミステリとして理想的なシチュエーションの事件であっただけにそれが顕著に窺える。とはいえ今回のエピソードにおいては、あくまでも仲違い状態にあった麗子と篠田にバディの信頼関係の重要さを気付かせるという意味合いの方に重きを置いた結果であろう。

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