道枝駿佑版『金田一少年の事件簿』の本気度がすごい 原作を“正反対”にする見事な脚色

道枝駿佑版『金田一少年の事件簿』の本気度

 5月8日に放送された『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系/以下『金田一』)第2話「聖恋島殺人事件・前編」。これは2013年連載開始の『金田一少年の事件簿R』(講談社)の終盤、2016年ごろに掲載された新しめのエピソードであり、もちろんこれが初ドラマ化だ。堂本剛版のパイロットエピソードでもあった超初期の「学園七不思議殺人事件」をリメイクした第1話から一気に対極へと飛ぶだけでも興味深いが、それを前後編でかなり本格的に作り込んでくるあたり、今回の道枝版の力の入りかたが並々ならないものであると感じることができよう。

 剣持(沢村一樹)からフィッシングツアーに誘われた一(道枝駿佑)。美雪(上白石萌歌)と佐木(岩崎大昇)も連れ立って向かったのは、絶海の島・聖恋島。その島には不気味な音が常に鳴り響いており、それはギリシャ神話に登場する海の怪物“セイレーン”の哭き声とも言われていた。ツアーの参加者は帝王大学病院に勤務する3名と、医療機器メーカーの営業マン2人、記者の右竜あかね(生田絵梨花)。そして大学病院の面々と面識がありそうなツアーガイドの凪田(吉谷彩子)と、島の唯一の住人・霧声(余貴美子)。最初の夜、謎めいた手紙によってコテージの一室に集められた全員。その目の前で、医師の寒野(高橋ユウ)が窓外の海から飛んできた矢によって殺害されるのだ。

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 『金田一』ドラマではおなじみの登場人物のカット/合成/設定変更はここでもしっかり取り入れられる。たとえば原作ではツアーに同行していたテレビクルーが存在していたが、その一名の苗字であった凪田をツアーガイドの役柄に移し替えて彼らを丸々とカット。それは原作で「こんな時佐木の奴がいたら……」と一がぼやいていた佐木が同行したことで、事件現場の様子の“記録員”が賄えたからに他ならないだろう。また登場人物を整理した上で、右竜のキャラクターを強くしてみたり、凪田と大学病院の医師たちとの因縁を付け加えてみたりと、うまく全体像の簡素化を防いでいることが見受けられる。

 そうしたなかで特に目を引いたのは、事件の発生順が完全に原作と“正反対”になっていることである。あまり詳しく書くと次回のエピソードの楽しみが減ってしまうので簡潔に述べれば、かなり大胆なトリックが繰り出された原作での第一の殺人を後回しにし、登場人物=容疑者全員の目の前で起きる第三の殺人を最初に持ってくる。そして海に引きずり込まれる=“セイレーン”の存在を強く意識させる第二の殺人を描くことで、ミステリーとしてわかりやすい段取りに加え、ドラマとしての視覚的なインパクトも前編に与え、後編への期待感をあおる。これはなかなか秀でた脚色ではないだろうか。

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