堂本剛版『金田一少年の事件簿』はやっぱりおもしろい! “三枚目”キャラと1話完結の醍醐味

 道枝駿佑版の『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)の第2話「聖恋島殺人事件・前編」が1週間放送延期となったことを受けて5月1日に放送されたのは、堂本剛が“初代・金田一はじめ”を演じた第2シリーズの第1話「悪魔組曲殺人事件」。これは通常のコミック連載を原作にしない、CDブックという形態で発表されたエピソードの実写化とあって、放送当時はイレギュラーかつ地味な印象を持っていた。それでも改めて観てみれば、原作コミックのイメージが強烈に焼き付いていないことが奏功し、“TVドラマとしての『金田一』”を純粋に堪能できるエピソードであったと再評価できる。

堂本剛

 どのような作品においても、とりわけその内容がおもしろければおもしろいほど、視覚的な“ファースト・インプレッション”は重要になる。もちろん『金田一』においては原作コミックがその“ファースト・インプレッション”であるわけだが、それでも実写版の基準はやはり堂本剛版の“初代”が圧倒的に強い。それは原作とダイレクトに比較してみても遜色のない世界観の構成がなされたことと、原作を大胆に脚色した上で為される堤幸彦の挑戦的な演出の2点に他ならない。

 世界観を担うのはやはり登場人物たちの存在だ。主人公であるはじめの、とことんおちゃらけ、すけべで、愛嬌全開のキャラクター性と、ひとたび事件に遭遇した際の“名探偵の孫”として見せる表情とのギャップ。その“三枚目”の主人公と、ともさかりえ演じる七瀬美雪、古尾谷雅人演じる剣持勇をはじめ、佐野瑞樹演じる真壁や原知宏演じる佐木らとの絶妙な掛け合い。作品そのものが持つコメディ性とミステリーのバランスが毅然と保たれていることが容易に窺える、作風のわかりやすさが実に魅力的だ。

 そして第1シリーズの際にはほとんどのエピソードが1話完結で描かれ、原作のエピソードを器用かつタイトにまとめあげるスピード感も見逃せない。それを実現するための登場人物たちの設定変更も厭わず(また時にはTVドラマとしての連続性を持たせるためにも機能する)、当時まだプライムタイムのドラマでも可能だったホラー性の高い描写も組み込む。紛れもなく、TVドラマが一番おもしろかった時代に、おもしろさをとことん突き詰めた作品であったといえよう。

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