『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』『ひらいて』 綿矢りさ原作主人公に惹かれる理由
前者2作が大九によって力強い作品へと磨き上げられたかと思えば、今度は首藤が『ひらいて』でヒリヒリとする青春劇をみせた。ヒロインの愛(山田杏奈)はある日同じクラスの男子高校生・たとえ(作間龍斗)に恋をする。しかし、たとえには秘密の恋人・美雪(芋生悠)がいた。愛は自身のねじれた感情を抱えきれず、美雪に言い寄って体の関係を結ぶ。そこに浮かび上がるのは愛憎狂気の入り乱れた強烈な三角関係であり、映像の美しさとは裏腹の骨太さが光る。いけないとわかりつつも、愛と同じように嫉妬や自己顕示欲や言葉にならない黒い感情に飲み込まれた10代に心当たりがあったという女性は少なくないだろう。綿矢作品が持つ“共感”の力は本作にも行き渡っているのだ。
我々は作品を通して、時に枕に顔を埋めて悶えたり、黒歴史がさも美しく素晴らしかったもののように感じたり、共鳴した部分を探ることで自分の人生を見つめ直す。ヒロインにある種の滑稽さを感じつつも、その実自分の真実の姿を突きつけられたような衝撃さえ受ける綿矢原作映画。そこには、ヒロインたちが根底に秘める衝動や情熱に共感することで鼓舞されるという魅力も孕まれているのだ。