『金田一少年の事件簿』道枝駿佑が“決定版”の一に 原作と堂本剛版を2022年の物語に昇華

『金田一少年の事件簿』今の物語に昇華

 「学園七不思議殺人事件」は、1995年に放送された堂本剛の初代・金田一一(同作では“金田一はじめ”とクレジットされていたが)による『金田一少年の事件簿』(以下、堂本剛版)のパイロットエピソードで描かれた事件。それだけに、新たな『金田一』の幕開けにもってこいのエピソードといえよう。以降、松本潤や亀梨和也、山田涼介と演じてきた同役を、なにわ男子の道枝駿佑が演じる今回のシリーズ。待ちに待った令和の『金田一少年の事件簿』、その第1話は想像以上の出来栄えであったとまず言っておきたい。

 金田一一(道枝駿佑)が通う不動高校に伝わる“学園七不思議”。その七つ目を知った者は“放課後の魔術師”に呪い殺されるとされており、七瀬美雪(上白石萌歌)は所属するミステリー研究会の部員たちとその謎を探ることに。そんななか、部長の桜樹るい子(大友花恋)から「見せたいものがある」と呼び出された美雪は、一を連れて夜の学校に。そこで目撃したのは旧校舎の「開かずの生物室」で首を吊っている桜樹と、傍にいる“放課後の魔術師”の姿。扉を壊して中に踏み込むもそこはもぬけの殻。しかしその翌日、開かずの生物室で桜樹の死体が発見されるのである。

 これまでの『金田一』シリーズでは同じエピソードを二度映像化したことがなかっただけに、今回は原作コミックと堂本剛版、二つの比較対象が存在し、否が応でもそのハードルは高くなる。それでも目を見張るのは、一と美雪の掛け合いの部分に多少のユーモアを残しつつも、それ以外の部分で見せる真剣なミステリーとのギャップが激しくならないという、原作に近いテイストを維持していることだ。これは同じ木村ひさし演出だった山田涼介版の『金田一少年の事件簿N』ともまた少し違う空気感を感じる。そしてもう一つ、その中に器用に原作と堂本剛版、両方のエッセンスを織り交ぜながらきっちりと“2022年”の物語に作り直していることも見逃せない。

 序盤の方から順に挙げていけば、佐木(岩崎大昇)の必須アイテムがスマホに代わっていることはいかにも2022年らしい脚色だ。そんな佐木が、原作における鷹島友代の役割を背負うという登場人物の複合/省略はこれまでのシリーズでも頻繁に用いられてきたこと。また真壁(細田佳央太)が桜樹に突き飛ばされて本棚が倒れ壁に穴が空くくだりと、中盤で真壁が連行されるくだりははっきりと堂本剛版を踏襲したものとなっているわけだが、解決編の方向性は堂本剛版のような大胆な脚色をせずに丁寧に原作に準拠。トリックを見破ることよりも“犯人は誰か”というシンプルなミステリーに引き戻される。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる