最旬2大女優のガールズムービー! 『ラストナイト・イン・ソーホー』が描く、現実と夢

最旬2大女優の競演によるガールズムービー

 ホラー、SF、アクションなど、これまで様々なジャンルの作品を手掛けてきたエドガー・ライト監督。『ラストナイト・イン・ソーホー』はサイコサスペンスだが、注目すべきは初めて女性を主人公に据えたことだ。しかも、2人の女性の人生を交差させるという手の込んだ構成。そこで本作のヒロインに起用したのが、『ジョジョ・ラビット』(2019年)、『パワー・オブ・ドッグ』(2021年)のトーマシン・マッケンジー。そして、『ミスター・ガラス』(2019年)、Netflixリミテッドシリーズ『クイーンズ・ギャンビット』(2020年)のアニャ・テイラー=ジョイという、いま注目を集めている女優たちだ。

 ファッションデザイナーを夢見るエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ファッションを学ぶために芸大に入学。地方からロンドンにやってくる。エロイーズは華やかだった60年代のロンドン、“スウィンギングロンドン”に憧れていたが、今のロンドンにその面影はなかった。学校では田舎者扱いされ、周囲に馴染めないエロイーズは寮を出て、ロンドンの繁華街、ソーホーにある古いアパートに引っ越すことに。そして、ある夜、不思議な夢を見た。そこは60年代のソーホー。彼女は伝説的なクラブ、「カフェ・ド・パリ」に足を踏み入れる。その時、彼女は歌手を目指すサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)になっていた。その日以来、毎晩のようにエロイーズはサンディの夢を見るようになる。

 これまでダメ男を描くことが多かったライト監督だが、今回は対照的な2人のヒロイン/女優の魅力を際立たせている。ニュージーランド生まれのトーマシンはエロイーズと同じ18歳で、今回初めてロンドンにやってきた。「背景が共通しているところにリアリティが生まれている」とライトはインタビューで語っているが、トーマシンは感受性が鋭いエロイーズを繊細な表現で演じていて、ロンドンで乗ったタクシーの運転手の視線に怯えるなど、初めて外の世界に踏み出したエロイーズの不安が物語に緊張感を生み出している。(※1)

 そんなエロイーズとは対照的に自信に満ちているサンディ。カフェ・ド・パリで業界に顔が利くマネージャーのジャック(マット・スミス)に出会うと、すぐ彼に取り入ってデビューを目指す。大きな瞳、輝くようなブロンドがサンディの華やかさを引き立て、ライトはアニャのフェミニンな魅力を引き出している。実は当初、ライトはアニャをエロイーズ役で考えていたらしい。M・ナイト・シャマランの作品で“スクリーミング・クイーン”として注目を集めた彼女ならエロイーズもうまくやれただろうが、本作では“野心的で大胆な女性”という、これまであまりやっていない役を通じて新しい一面を見せてくれる。

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