北村匠海のアタルが今度は世界に? “在宅”で完結させた『名探偵ステイホームズ』の面白さ

“在宅”で完結『名探偵ステイホームズ』

 オンライン上に出回る情報をもとにした“特定”のスキルを買われ、地下アイドル失踪事件の捜査協力をすることになった「子供部屋おじさん」の相田アタル(北村匠海)。しかしその地下アイドル・藤山メイ(大原優乃)は遺体となって発見され、さらにアタルを捜査に招き入れた警視庁公安部の沼田(谷原章介)や、小学生の頃友人だった環境大臣の斎藤(黒羽麻璃央)が事件に関与している可能性が高まる。そして沼田の遺体を坂本(松本まりか)が発見したタイミングで、アタルのもとに沼田からビデオ通話が掛かってくるのである。

 4月10日に放送された『名探偵ステイホームズ』(日本テレビ系)後編は、前編とは打って変わって不可解なミステリー色高めの状態からスタートする。ディープフェイクで沼田を装ったビデオ通話の相手は一体誰なのか、捜査に参加している智子(森川葵)は何者なのか。沼田が死亡した日の足取りを辿るうちに見つけた一台のノートパソコン。そこに記録された動画からアタルと坂本は、沼田が斎藤の不正を暴くためにメイに協力を依頼していたことなどを知る。そしてアタルは斎藤の身辺をSNSの情報で調査していくうち、ある企業の存在にたどり着くことに。

 政治家の不正とそれを隠蔽するために重ねられた悪行という、このドラマにおけるミステリーの落ち着くところは極めてシンプルで、思いのほかありふれたものであった。とはいえこれが、家から一歩も出ることなく(結果的に劇中ではアタルは半ば止むを得ないかたちで外に出ることになるわけだが)オンライン上の情報から推理を固めていくという現代的なスタイルによって成立するミステリーの“序章”、あるいは一種の“パイロット版”であると捉えれば、その捜査スタイルを見せることが最大の目的であると十分に納得できよう。

 むしろここのところ連続ドラマの多くが(ミステリーもの以外でも)1クール通して些細な伏線をひたすら回収していくことに気を配りすぎているきらいが強いだけに、このぐらいミステリー解決にカタルシスを置かずにキャラクターを優先するスタイルは実に観やすいと感じてしまうほど。前後編でさくっと物語をまとめ上げ、適切な範囲にだけ広げた伏線を自然なかたちで回収していく。その中でも、智子の正体がディープフェイクで、実はアタルの母・恵美(鈴木保奈美)だったという顛末は、このドラマが徹底的に“家の中だけ”で構成させることを表しているようでユニークである。

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