『鎌倉殿の13人』菅田将暉、無邪気さと冷酷さを両立させた狂気 許されざる嘘のおぞましさ

『鎌倉殿の13人』菅田将暉の狂気

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第11回「許されざる嘘」。鎌倉では、源頼朝(大泉洋)の新たな御所が完成した。一方、都では平清盛(松平健)が敵対勢力の掃討に乗り出し、人々はその苛烈さに恐れおののく。しかし翌年、清盛は「頼朝を殺せ」と言い残してその生涯を閉じた。

 第11回は、随所随所に散りばめられたコメディパートの印象が薄れるほどに「許されざる嘘」のおぞましさを感じる回となった。

 まずは源義経(菅田将暉)の所業について。兄・頼朝を誰よりも慕う義経は、同じく頼朝を助けるために都からくだってきた頼朝の異母兄弟・義円(成河)を強く意識している。義円は武術に優れているだけでなく、「孫子」を語り、和歌の素養もある。他の兄弟を思いやる気持ちも強く、平家討伐を急く義経が頼朝に叱責されたときには「九郎の兄上を思う気持ち、どうか分かってあげてください」と間に入った。無論、義経は義円のこの振る舞いが気に食わない。義円が武術の腕を磨いているとき、義経を演じる菅田は頬杖をつき、不貞腐れた顔を見せる。「面白くない」と感じている義経の心情がありありと伝わってきた。仲裁に入った義円の言葉を聞いたときには、菅田は義円を鋭く睨みつけた。眉間にしわを寄せ、口元が歪んでいく菅田の表情が、義円への嫌悪感を示す。他の兄弟を思いやる義円の言葉は、義経の兄弟への強い対抗心をかえって掻き立てることになった。

 頼朝の叔父・源行家(杉本哲太)の誘いに頼朝の弟たちが応じない中、義経は、義円が行家への恩義を気にしていることに目をつけた。言葉たくみに彼をたきつけ、出立させた義経は義円の文を破り捨てた。その顔つきは実に冷ややかだが、頼朝を前に嘘をつく彼に悪びれた様子はない。しかし梶原景時(中村獅童)により義経の所業の一部始終は頼朝の知るところとなり、義経は頼朝に「愚か者!」と叱責される。その瞬間の義経は、親に叱られた子供のように幼く、今にも泣き出しそうに見えた。明らかに落胆し、元気を失った義経が、頼朝の声かけに返した「義円は」の声色は、すねた子供の声色だった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる