オーストラリア社会における男性像の正当性を問いかける 『ニトラム/NITRAM』本編映像

『ニトラム/NITRAM』本編映像公開

 3月25日公開のケイレブ・ランドリー・ジョーンズ主演映画『ニトラム/NITRAM』より本編映像が公開された。

 本作は、1996年4月28日、オーストラリアの世界遺産でもある観光地ポート・アーサー流刑場跡で起こった無差別銃乱射事件の犯人の半生を描いたサスペンス。第11回オーストラリア・アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚本賞ほか主要8部門で最多受賞を果たした。

 本作で描かれるのは、事件当日に至るまでの犯人の日常と生活。舞台は、90年代半ばのオーストラリア・タスマニア島。かつて囚人の流刑地だった、観光しか主な産業がない閉塞したコミュニティに暮らす青年が、いかにして同国史上最多の被害者を出した銃乱射事件の犯人となったのか、その不可解な半生が描かれる。

 主演を務めたジョーンズは、カンヌ国際映画祭、オーストラリア・アカデミー賞、シッチェス・カタロニア映画祭などで主演男優賞を受賞。ほかにも、母親役にジュディ・デイヴィス、父親役にエグゼクティブプロデューサーも兼任するアンソニー・ラパリア、ヘレン役でエッシー・デイヴィスが共演に名を連ねた。

映画『ニトラム/ NITRAM』本編映像

 公開された本編映像は、サーフィンに憧れる青年と母親がやりとりをするシーン。サーフボードを買いたい青年は、「カネが足りない」と母にねだる。だが母は、前にもスキューバダイビングの装具を買ったが、泳ぎもしないのに今度はサーフボードをねだるなんてと思い「もうお金を無駄にはしない」と言い放つ。それでもどうしてもサーフボードが欲しい青年は、サーフィンで楽しそうに波に乗る同年代の青年を、海岸からただ眺めるしかないのだった。

 監督を務めたジャスティン・カーゼルは本作の制作意図について、「犯人からの視点を取ることによって、いとも簡単にこのような事件が起こってしまうこと、社会的に孤立していること、簡単に銃にアクセスできてしまうことの危険性を描きたかったのです。この映画に出てくる人たちは、皆、誰かと一緒になりたい、誰かと繋がりたいと思って絶望的になっている」と語る。

 また、本作に込められた問題提起について、「サーファーは、オーストラリア社会における、男の象徴であり、理想です。荒々しい社会の中で生きてゆくためには、男性はタフで決して妥協せず、肉体的であらねばならない。そんなオールドスクールな男性像が未だ理想とされている。そういう人に男の子は憧れる。一方で、その男らしさは脆弱でもある。最も男らしい種族とされるサーファーにもしあなたが慣れなかったら、どう生きてゆくのか? その答えがまだオーストラリア社会にはありません。そんな男性像の正当性も問いかけたかった」とコメントした。

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■公開情報
『ニトラム/NITRAM』
3月25日(金)全国公開
出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジュディ・デイヴィス、エッシー・デイヴィス、ショーン・キーナンほか
監督:ジャスティン・カーゼル
脚本:ショーン・グラント
配給:セテラ・インターナショナル
2021年/オーストラリア/英語/ヴィスタ/110 分/原題:NITRAM/日本語字幕:金関いな
(c)2021 Good Thing Productions Company Pty Ltd, Filmfest Limited

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