“伝説の反逆者”を改めて映画化した理由とは? ジャスティン・カーゼル監督に聞く

J・カーゼルがネッド・ケリーを映画化した訳

 オーストラリアの“伝説の反逆者”、ネッド・ケリーを描いた映画『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』が6月18日より渋谷ホワイトシネクイント、新宿シネマカリテほかにて全国順次ロードショーされる。これまで英雄としてのみ語られていたケリーだが、ブッカー賞を受賞したピーター・ケアリーの『ケリー・ギャングの真実の歴史』を原作とした本作では、悲惨な境遇から抜け出そうと苦悩し闘う、ひとりの若者として描き出した。

 監督を務めたのは、これまで『スノータウン』(2011年)、『マクベス』(2015年)、『アサシンクリード』(2017年)などの作品を手がけてきた、オーストラリアの映画監督ジャスティン・カーゼル。そんなカーゼル監督にインタビューを行い、改めてネッド・ケリーを描こうとした理由や、広く知られているキャラクターを映画化する際のポイントについて話を聞いた。

「重要なのは、“何が真実なのか”ということ」

ーーネッド・ケリーを題材にした映画は、『太陽の果てに青春を』(1970年)や『ケリー・ザ・ギャング』(2002年)など、これまでも複数の作品が生み出されてきました。そういう観点から、あなたは「いまネッド・ケリーの映画を改めて作る必要があるのか」と最初はプロジェクトに対して消極的だったようですが、結局引き受けることにした背景を教えてください。

ジャスティン・カーゼル(以下、カーゼル):最初は、過去に何作も作られたネッド・ケリーの映画をまた作る必要があるんだろうかと思っていたんです。それに、ネッド・ケリーは極端な描かれ方をされがちなので、すでにイメージが出来上がっていました。でも、一度考えてみようと思って、過去に読んだことがあって知っていた、映画の原作であるピーター・ケアリーの『ケリー・ギャングの真実の歴史』をもう一度読み返してみました。すると、オーストラリア人であることの意味など、いままでにはなかった考えに襲われ、アイデンティティを問われる経験をしたんです。私は当時、ロンドンに5年住んでいて、映画を撮りながらとてもホームシックになっていました。そんなときにこの原作を読んで、「これはオーストラリアに帰国して撮りたい!」という強い思いが湧いたのです。

ーーオーストラリア人にとって、やはりネッド・ケリーはそれだけ大きな存在なのでしょうか?

カーゼル:そうですね。学校で歴史の教科書に出てくることもあり、ネッド・ケリーは“オーストラリアの象徴”として捉えられています。興味深いのは、盗賊であり白人男性であることが“オーストラリア的”と捉えられていることが多いこと。でも私は、それを“オーストラリア的”だと思わない部分がありました。盗賊であったという理由で、彼がオーストラリアの神話的に扱われているのが妙だなって思っていたんです。実は、ネッド・ケリーの歴史は何度も書き直されていて、書いた人の好きなように解釈されてきたところがあります。つまり、彼の人生や真実は、逆に盗まれているということ。ネッド・ケリーのそういう部分に、私は関心を持ったんです。

ーー史実をもとにした映画であれば、「本作は真実に基づいたストーリーである」とテロップが出てくることが多いですが、この映画では「この物語に真実は含まれていない」というテロップが出てきます。

カーゼル:言葉をいじって、ちょっとした遊び心を入れました。それと同時に、「本作は真実に基づいたストーリーである」というテロップが出てくると、ちょっと嘘くさいと感じてしまいますよね。だってそれは、脚本家だったり監督だったりの視点で解釈されているわけですから。だから重要なのは、“何が真実なのか”ということ。これがまさにネッド・ケリーが抱えていたジレンマだと思うんです。自分の歴史が盗まれるであろうことを彼自身がよく分かっていたので、生まれてくるであろう娘のためにその歴史を自分で書き残そうとしたわけです。いまの時代、自分の歴史を自分の手で取り戻す、あるいは書き残すことは、非常に大事なんだなと感じます。歴史というものは簡単に書き直されてしまいますから。

ーー今回ネッド・ケリーを演じたジョージ・マッケイは、髭を蓄えた一般的なネッド・ケリーのイメージとはかけ離れたビジュアルになっていましたが、そういう面でもやはり既存のイメージから脱却しようという狙いがあったのでしょうか?

カーゼル:これまでは、ネッド・ケリーを演じる役者を選ぶときに、“どれだけいいひげを蓄えられるか”が基準になってきました。なので、今回はそれを取っ払って、髭がない人を選ぶという決断をしました。ジョージ(・マッケイ)にも、“こうあるべき”というようなネッド・ケリー像に囚われてほしくないと伝えました。逆に私が彼にやってほしいと伝えたのが、木を切ったり、馬に乗ったり、詩を書いたり、まさにネッド・ケリーが実際にやっていたような身体作りです。日々生活を送る中で作られていく身体と行動。それをやることによって見えてくる役作りが必ずあって、それで役に入り込むことができると私は考えています。ケリー・ギャングの4人の青年たちにも、実際にバンドを組んでもらって、パブでパフォーマンスをするように伝えました。彼らはバンド活動を通して仲間になっていったんです。

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