成海璃子×小川紗良『湯あがりスケッチ』“2つの世界”が描かれた異色回
穂波は、タカラ湯にいる時、いつも会話の中心にいるわけではない。強烈な個性を持つ登場人物たちに囲まれて、いつも穏やかに、時折困ったように笑っている。取材先の銭湯でも女子会でも、家にゆづ葉(新谷ゆづみ)を泊めた時も、穂波はいつも、隣にいる誰かにすっと寄り添って、その人が自然と話し出すのを待っていた。まるで、全てを受け入れ、包み込む銭湯そのもののように。一方で、取材先の銭湯に行って実測する丁寧な仕事ぶりは、彼女がいかにきちんとした、職人肌の人なのかを伺わせる。また何より、誰かがこうして、彼女自身への質問を投げかけた時、「私はこう」と悩みながらもはっきりと答えるその姿には、強い意志と信念を感じさせるものがある。
最後に、世界はもう一度2つになって、もう1つの、あったかもしれない世界を見せる。序盤に描かれた、灯子が大学生の頃、図書館で同じように『草枕』を読んでいる女学生を見つけたこと。穂波と出会った灯子は、一人きりの世界から、恐る恐る一歩前へ、足を踏み出そうとする。「あの時、彼女に話しかけていたら、どうなっていたんだろう」と思う。本好きの彼女は、そうやって、想像することで、彼女の世界を自在に動かすことができたのだった。灯子は、かつて出会った彼女の元に行き、微笑みかける。灯子に向かって微笑んだ彼女は、異国の言葉で『草枕』冒頭を朗読するのだった。まるで、最初の灯子の朗読に呼応するかのように。
「澤井さんは、どうしてここにいるんですか?」
「澤井さんのイラスト、本にさせてもらえませんか?」
世界はぐるっと一回転して、『湯あがりスケッチ』第1話冒頭の灯子の台詞に戻り、いよいよ来週、最終回へと繋がっていく。
ひかりTVでは『湯あがりスケッチ』をはじめとして、銭湯・サウナを舞台にしたドラマを多数配信中!
■放送情報
『湯あがりスケッチ』(全8話)
ひかりTVにて、毎週木曜22:00〜配信
原案:塩谷歩波『銭湯図解』
監督・脚本:中川龍太郎
出演:小川紗良、森崎ウィン、新谷ゆづみ、村上淳、伊藤万理華、安達祐実、臼田あさ美、室井滋、夏子、中田青渚、成海璃子
(c)ひかりTV
公式サイト:https://www.hikaritv.net/sp/yuagari-sketch/index.html?cid=ent_video_yuagari_sketch_of_6
公式Twitter:https://twitter.com/yuagari_sketch
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