『カムカムエヴリバディ』2代目モモケンに重なるかつての算太 受け取った父からのバトン

『カムカム』団五郎に重なるかつての算太

 意地を張ってしまい、算太が出征する時も見送らなかったことを死ぬ間際まで後悔していた金太。一方、実は算太の方も父に似て素直じゃない。家の敷居を跨がせてもらえなくなった時も、戦地から帰ってきて早々、妹以外の家族が死んでしまったことを聞かされた時も、何でもないような顔をしてやり過ごしていた。そんな算太の性格を察し、彼が閉じ込めた感情を吐き出させてくれたのが美都里(YOU)の言葉だ。

「恋しいんじゃろう? お父さんとお母さんに会いとうて、たまらんのじゃろう?」

 誰だって自分の後悔と向き合うのは怖い。それが取り返しのつかないものだったら尚更だ。算太の場合、「ごめんなさい」を伝えたかった父と母はすでにこの世を去っていた。もう謝ることもできない、両親の思いを知ることもできない。そんなとてつもない恐怖から逃れるために、算太はいつものようにふざけてやり過ごそうとしたのだろう。でも、反対に息子を戦争で亡くした美都里の優しい言葉と抱擁で算太は素直になれただけではなく、「生きとるだけでええ」という両親からのバトンをしっかりと握ることができた。

 そんな算太が、父と共演するはずだった『妖術七変化!隠れ里の決闘』を観て号泣している団五郎に「親父さんが無名の俳優とあねえ見事な殺陣をやったもんじゃからヤキモチを焼きょうるんじゃろ」と声をかけ、その上で初代の思いを代弁するとは感慨深い。きっと父親に対し、憧れと反抗心が入り混じった感情を抱いている団五郎にかつての自分を重ねたのだろう。なにせ算太は金太の意思を引き継いで「たちばな」再建を決意するも、失恋でヤケになってその夢を手放してしまったのだから。父に見捨てられたと思っている団五郎に、自分と同じような過ちをして欲しくないと思ったに違いない。おかげで団五郎は父と向き合うために自身も桃山剣之介として“黍之丞”を演じ、自分だけの“左近”を見つける旅に出発できた。道中、二代目モモケンはまた運命の出会いを果たすのだが、それは本日放送の第84話で明かされる。

 さて親子の確執といえば、まだ安子(上白石萌音)とるい(深津絵里)の和解が果たされてない。二人も未だ互いに拒絶されたと思い込んでいるが、さりげなくそのきっかけを作ってしまったのも算太である。だからこそ、まだ彼には一役買ってもらわねばなるまい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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