『カムカム』本郷奏多が愛おしさ倍増キャラに 表情の機微で魅せる演出と過去への重なり

『カムカム』本郷奏多が愛おしさ倍増キャラに

 あんなに第一印象が最悪だった五十嵐(本郷奏多)が、今や一番の愛されキャラへと変貌を遂げた。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第81話では、そんな彼とひなた(川栄李奈)が映画を観に行く。彼らが観るのは、おそらく再映画化の発表に伴ってリバイバル上映が開始された『妖術七変化!隠れ里の決闘』。何を隠そう、そのチケットをひなたにあげたのは、彼女の大叔父・算太(濱田岳)である。

 算太とひなたの絡みは、いつ彼女が彼の正体を掴むヒントを得ることができるか、視聴者としては気が気でならない。しかし、その糸口を先に掴んだのはどうやら算太だった。

「踊ってる時、楽しそうでしたね」
「踊っとる方が、楽しそう」

 濱田が見せる、細かい表情が算太の心の機微を捉えるという演出に、まずグッと心を掴まれる。いつか、幼い安子(網本唯舞葵/上白石萌音)に言われた言葉を、目の前のひなたに言われ算太の心は一時過去へと向いたことだろう。自分がお金を持ち逃げしたあと、安子に謝りに行ったり、折り合いをつけたりした様子は見受けられない。だから、橘の姓を名乗ることができないのではないだろうか。自分にはその資格がないから。

 代わりに、クリスマスに戦争から帰還した時のことを思い出させるように、「算太・くろす」と名乗る。そして、“サンタ”らしくひなたに映画のチケットをプレゼントして、その場から姿を消していた。自分の妹と同じような言葉をかけた少女、しかも算太は彼女のことを「大月」と認識していた。さらに、長年モモケン(尾上菊之助)との交流があるのだとすれば、彼が夢中になった回転焼きの存在も知っているかもしれないし、食べたことすらあるかもしれない。そのあんこの味と、ひなたの言葉。算太の中で、点と点が結ばれることはあるのだろうか。

 さて、ひなたと五十嵐の映画デート。そう、あれはもう立派な“デート”だ。自分はその日のご飯もまともに買えないほどの赤貧なのに、ひなたにポップコーンを買ってあげる。チケットのお礼ということで、フェアにいたいだけと言われたらそれまでだが、帰り道を家まで送り届けてあげる行為に、そういった損得勘定はない。ただ、女の子のひなたを一人で帰さないようにする。まさに紳士的な、いや武士的な姿勢にどんどん五十嵐の好感度が増していく。

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