『カムカム』安達祐実演じるすみれからにじみ出る寂しさ ひなたは彼女から何を学ぶ?

安達祐実演じるすみれからにじみ出る寂しさ

 憧れの人は、自分の想像通りの人物とは限らない。特に俳優はテレビで“お芝居”をしているのであって、我々に見せているその素顔は決して本人のものとは限らず、あくまで役としての顔だ。子供の頃にモモケン(尾上菊之助)のサイン会に行った時、幼いひなたは「嫌な人だったらどうしよう」と自分自身でそういうことも理解していたはず。しかし、モモケンがあまりにも神対応すぎて、どんな俳優さんも彼のように素敵なのだろうと思ってしまったのかもしれない。しかも、今回すみれが「客寄せパンダ」とショーへの出演を嫌がっていたのに対し、どれだけ売れっ子になってもモモケンは余興として殺陣を見せてくれていて、こういったファン対応の違いがすみれとモモケンの俳優としての“プロさ”に差をつけているのだろう。

 榊原にとっては、ああいった女優の態度は日常茶飯事というが、ひなたは「あんな感じな人なんですね」と少しガッカリする。おそらく、あの様子じゃ色紙は“貰いに行かなかった”のかもしれない。しかし、すみれはすみれでシリーズを卒業し、東京に行っても仕事があまりないという状況で、ショーの出演と引き換えに無理にでも『破天荒将軍』で役をもらうという、少し寂しいキャラクターだ。ああいう物言いや態度の背景にある意地らしさを考えると、単純に「いやな女優」とも言い難い。

 憧れの人が強い物言いで他人と会話しているのを盗み聞きしてしまった日の帰り、その影響なのかわからないが、ひなたも回転焼きを買いに来ていた五十嵐(本郷奏多)に心無い言葉をかける。

「偉そうに言って、下っ端中の下っ端やん」
「アラカンの50倍が、聞いて呆れるわ」

 五十嵐は蓋をあけてみたら、まだ養成所を卒業したばかりの俳優の卵だった。切られ役もやらせてもらえない、しかしこれから頑張っていきたい彼に決して言ってはいけない言葉を並べ、オーバーキル気味なひなた。しかし、そんな彼女が例えば今後、すみれの人となりや役者としての苦労、それでもかじりついていこうとする根性を知っていくことができたらいいなと思う。そうすれば、五十嵐の気持ちも、五十嵐に言った言葉の残酷さ、そして何もないところから“何者かになりたい”という同じ志を共有する、似た者同士であることにも気づけるから。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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