『カムカムエヴリバディ』ひなたの初恋終わる 昭和51年、テレビ全盛期の流行も次々と登場
本作の脚本を手がけた藤本有紀がひなたと近い世代で、作者の少女時代の経験がふんだんに盛り込まれていると思われるが、あらためてこうして見ると、ひなたが小学生だった昭和40年代から50年代がテレビの全盛期だったことを感じる。そんなわけでお茶の間の主役はテレビに変わり、ラジオは隅に追いやられつつあった。ひなたもテレビと漫画の見過ぎで寝坊してしまい、見かねたるいが雷を落とすも(「恐怖の大王はうちにいた!」)、ラジオ英会話を聞く習慣は定着せずに途絶えてしまった。ひなたがラジオ英会話を聞かなくなってしまうエピソードは、米国の占領下にあった日本が、戦後の復興を経て独自の文化を華開かせて行く過程と二重写しになっているようで興味深い。
移り気な小学生を責めることはできない。なぜなら、本人がいちばん悔やんでいるから。るいと錠一郎が検診に行っている間にビリーが店を訪れる。回転焼きを買いに来たビリーに、ラジオ英語講座で覚えた「Why don’t you come over to my place?(うちに寄って行きませんか)」を発しようとするが、何も答えることができず、ビリーは叔父に連れられて店を去る。「なんやったっけ? ラジオで言うてたやつ。習ろたやん。覚えたやん」。外国語を話そうとして固まってしまった経験は多くの人が持っていると思うが、ひなたもそれを経験したのだった。
そして、ビリーの叔父が「飛行機に乗り遅れる」と言ったのが、日本を発つためだとしたら、ひなたがひそかに恋心を抱いていた相手、ビリーとの初恋も終わったことになる。この出来事は、ひなたが歩んでいく人生にどんな影響を及ぼすだろうか?
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK