『ジャッカス』新作、TikTokへのアプローチで北米興収1位 笑いが閉塞感を吹き飛ばす?
アメリカ映画界のリバイバルブーム、まさかこんなところにも。2022年2月4日~6日の北米興行収入ランキングを制したのは、2000年代に人気を博したバラエティ番組『ジャッカス』の映画版シリーズ最新作『Jackass Forever(原題)』だった。週末の3日間で2350万ドルを稼ぎ出し、堂々の首位に輝いている。
「ジャッカス」とは“バカ”、“マヌケ”という意味で、そのタイトル通り、いい大人たちが危険すぎるスタントやイタズラ、下ネタの数々に身体を張って挑戦するコメディ番組。2000年に米MTVでの放送が始まるやすぐに人気番組となるが、過激なパフォーマンスを真似した視聴者が事故を起こす、死者が出るなど社会問題に発展。それでもシリーズの人気は収まらず、映画とテレビスペシャルが断続的に製作されてきた。
このたび公開された『Jackass Forever』は、映画版の前作『ジャッカス3D』(2010年)以来12年ぶりに主要メンバーが全員復帰(2011年に逝去したライアン・ダンを除く)。映画版第1作『ジャッカス・ザ・ムービー』(2002年)から20周年というメモリアルイヤーを記念する作品でもある。
ただし『ジャッカス』がスタートした時点でメンバーの大半は30歳前後だったため、それから20年が経った今、メンバーは50歳前後(最年少で42歳)。当時から「いい大人たちが……」というコンセプトだったが、すでに「いい大人たち」のレベルをとっくに超えている。そこで今回は若手の新メンバーも加え、さらなるムチャをやってみようという試みなのだ。
興行的に注目したいのは、22年の歴史を誇る長寿シリーズである『ジャッカス』ながら、本作を鑑賞した観客の67%が18歳~34歳という若年層だったこと。むしろ、リアルタイムでシリーズに触れてきたはずの35歳以上は25%にとどまっている。これについて米Deadlineは、TikTok上のプロモーションが功を奏したと分析。1億5000万人以上のユーザーにリーチし、プレミアイベントの配信には700万人の視聴者が集まったという。
もっとも冷静に考えれば、『ジャッカス』がYouTuber/TikTok世代に“刺さる”のは決して意外なことではないだろう。近年のYouTuber/TikTokerの例を踏まえれば、『ジャッカス』こそ彼らの元祖だったとさえ言えるのであり、過去に彼らがやってきたイタズラなどは、いわゆる“迷惑系YouTuber”のレベルさえあっさりと上回るものだった。現にパラマウント・ピクチャーズがコラボを申し込んだインフルエンサーは、『ジャッカス』メンバーを「先輩」「神様」といった言葉で称えている。