ディーン・フジオカ、初プロデュースで実感した日本映画の現在地 挑戦の数々を振り返る

ディーン・フジオカが実感した日本映画の今

「自分の中で見えるものが変わりました」

――本作は殺陣などのアクションシーンも見どころですね。今まで海外でも映画制作に携わってきたディーンさんですが、海外と日本の映画の作りにおける違いは何だと考えますか?

ディーン:1番大きい違いだと思ったのが、日本は使いにするフッテージの本数が圧倒的に少ないこと。なので、現場でベストなものにするまでに、一応本番の扱いにはしない。しかし、中華圏や北米ではミスをしたとしても、使える部分があったら全部編集に持っていくんですよね。「なんとかなるんじゃない?」みたいな(笑)。「日本は本番テイクを撮影するまでの段取りを数多く踏むな」と日本で仕事をし始めて最初に感じました。そこで鮮度みたいなものが失われる時もあれば、逆に現場の結束が固まってすごく良いものが生まれる可能性ももちろんあると思います。セリフを一言噛んだだけなら、他の国では絶対一つ前のセリフに戻ってそのまま続けるのに。要は、監督が「カット」と言うまでは、絶対やめないんですよ。だから最初の頃は日本のやり方に慣れなかった。

――興味深い話でした。今回、制作に携わっていた中で挑戦的だったことはなんですか?

ディーン:すべての工程において初めてだったのでチャレンジではありましたが、自分の中で見えるものが変わりました。赤と緑のフィルターを通して視力が測れたりするやつがあるじゃないですか。あれをやった感じなんですよね。日本語の人、日本人、日本に住んでいる、日本を理解している人の感覚で見て成立しているか、もしくは逆に、全く日本の文化がわからなくても成立しているかどうかということをずっと気にしながら制作していたので、結構それが難易度高かったですね。

ーー誰もが受け取れる作品を目指したと。

ディーン:あとは企画をそもそも成立させることが難しかった。日本だと、原作に漫画、アニメ、小説がないと、なかなかお金がつかないじゃないですか。後は、プリプロが始まってからも、主要メンバーが変わることもあったのでそこら辺も難しいと思いました。でも、松永大司さんに監督が決まって、そこからとても大きな推進力が加わってこういう作品になったと感じるので、「縁だなぁ、タイミングだなぁ」と思いました。ライブですね、映画を作るということは。撮影が始まってからは、アクションにすごくこだわりたかったので、リハも丁寧にやろうと思っていましたが、なぜか時間が足りないんですよね。別に誰か手を抜いているとか、そういうわけでもないのに、どうしても思ったように時間配分がいかない。そもそもアクションを撮るということ自体がすごく日数的に手間もかかる作業なので、全体の作品を仕上げるうえでどれだけ優先度をアクションにもっていくか、他との兼ね合いもあって自分が理想としていたスケジュール組みができなかったです。妥協せざるを得ない部分もありました。アクションにおいても、やはり理想には辿り着かないということもあったし。しかし、その時々の状況でベストな判断をしてきたとは思います。

ーー限られた条件の中での試行錯誤だったんですね。

ディーン:ただ、編集でフッテージを繋いでみて、そこからまた脚本を変えたのですが、撮影後に脚本を変えることができるということは、原作がないことの強みだなと感じました。手元にある素材を把握して、そこからもう一度物語を組み替える。なので最終的に『Pure Japanese』は、自分の中では三重の構造になっている作品なんです。一度解体して、音響やセリフ、ナレーションも含めて、また違うストーリーに組み替えていったので、そこに関しては自由度がありました。原作の出版社や原作者の意図を気にしないでいい。自分がそこに責任を持てる。最初に言ったコンセプトをどれだけ初志貫徹できるかだと思うので、途中の形状が変わっても、そこさえ守り抜いてもっと良い方向で作れば良い。柔軟に変えていけるという意味で、このアプローチはすごく効果的かなと感じました。

――共演された蒔田彩珠さんの印象はいかがでしたか?

ディーン:共演した時は、まだ18歳とかだったのかな。「少女がやってきた」という感じでした。結構タフな撮影で、血まみれになるシーンも結構あって大変だっただろうなと思います。感情を爆発させたりもしたし。でも、すごくプロでしたね。すでに素晴らしい女優さんだな、と思っていました。『Pure Japanese』は2020年の9月に撮ったんですが、2021年になって自分が大河ドラマに出演して、彩珠も朝ドラの撮影をしていたから、スタジオが隣で、廊下ですれ違ったり楽屋挨拶に来てくれたりして。そしたら、なんか大人になってたんですよ。「10代後半の変化ってすごく大きいな」と改めて感じました。なんか、ちょっと親戚みたいな感想になっちゃいましたけど(笑)。

――本作は受け手に対して委ねられる作品だと思いますが、改めて本作を鑑賞する方へのメッセージをお願いします。

ディーン:“映画館にお参りに行く”みたいな感覚で観てもらえたらいいなと思っています。この作品は自分と対話すること、自分の中で一度向き合わないといけないものと、向き合わざるを得なくなる映画だと思う。鏡、なんですよね。映画の中でも、神社の中で鏡のカットを入れていますが、まさにあれで。「あなたは“ピュアジャパニーズ”という概念に対してどう思いますか?」と。これは日本語社会、日本語話者に対してはもちろん、全く日本語と関係ない人にとっても、「こういうジャパニーズというトライブがいて、日本語人たちの集まりなんだけど、どう?」みたいな。映画館という音と光の迫力がある中で、こういう作品を見てもらうことが、その肉体の生理的な反応と自分の中の精神的な反応と、そのまま比例する形で繋がってくると思うんです。それを見越して色々仕掛けを作っているのでぜひ映画館で、観ていただけたら嬉しいです。

■公開情報
『Pure Japanese』
全国公開中
出演:ディーン・フジオカ、蒔田彩珠、渡辺啓、金子大地、坂口征夫(DDTプロレスリングプロレスラー・元総合格闘家)、村上淳、嶋田久作、別所哲也
監督:松永大司
脚本:小林達夫
企画・プロデュース:ディーン・フジオカ
製作:アミューズ
企画・制作協力:ブリッジヘッド 
制作プロダクション:ザフール 
配給:アミューズ
配給協力:クロックワークス
(c)2021「Pure Japanese」製作委員会

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2月22日(火) 

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