大ヒット『スパイダーマンNWH』はひとときの奇跡に? コロナ禍で固まった映画興行の傾向
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はコロナ禍における映画業界復活の兆しだったのか、それともひとときの奇跡にすぎなかったのか。この問いにひとまずの答えを出すならば――オミクロン株の感染拡大の影響もあろうが――おそらくは後者だったのではないかと言わざるを得ない。
先週、人気ホラー映画『スクリーム』シリーズの最新作『Scream(原題)』が大ヒットしたことを受けて、次週は『スクリーム』が勝つか、それとも『スパイダーマン』が勝つのかと状況をうかがったが(参考:米興行、『スパイダーマンNWH』が『スクリーム』に首位譲る 『竜とそばかすの姫』好発進)、1月21日~23日の北米興行収入ランキングは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が制した。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は先週の第2位から首位に返り咲き、1412万ドル(前週比−29.7%)を記録。一方の『Scream』は公開2週目ということもあり、前週比−58.7%というやや大きめの下落率を示し、1240万ドルを稼ぎ出して第2位についた。公開館数は前者が3705館、後者が3666館という僅差だが、北米累計興収を比較すれば、前者が7億2101万ドル、後者が5134万ドルで、もちろん両者のスケールは大きく異なるものの、ランキングの首位と第2位として並べるにはいささか違いが大きすぎる。
現在、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は北米興行収入ランキングの歴代第4位に座しており、第3位の『アバター』(2009年)を抜くまで約4000万ドルというところまで到達した。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は公開直後のロケットスタートで記録を伸ばしたが、『アバター』は時間を経ても堅実な成績をキープしての大ヒットだったため、興行収入の積み重ね方はまったく異なる。ただし、まだ『アバター』超えはまだ大いにありうる状況だ。全世界興行収入は16億9111万ドルで、『ジュラシック・ワールド』(2015年)と『ライオン・キング』(2019年)を抜いて歴代第6位となっている(中国では未公開)。
日本にせよ北米にせよ、コロナ禍によって大きく変わってしまったのは、大作イベントムービーには大勢の観客が足を運ぶものの、その他の映画は1億ドル、いや5000万ドルに迫ることさえ難しいという傾向で固まってしまったことだ。
すなわち『Scream』の2週目で5134万ドルという数字は大ヒットといえる部類なのであり、『キングスマン:ファースト・エージェント』は同じく5週目で3151万ドル、ジェシカ・チャステインやペネロペ・クルスら豪華女優陣のスパイ・アクション『355』は3週目で1108万ドル、ザッカリー・リーヴァイ主演の伝記映画『American Underdog(原題)』は5週目で2313万ドル、『ウエスト・サイド・ストーリー』は7週目で3505万ドル。いずれも1週目は上映館数3000前後という公開規模だったが、2000~3000万ドル台に落ち着くことになりそうだ(『355』の2000万ドル到達は難しいかもしれない)。