『鎌倉殿の13人』大泉洋と西田敏行の抜群のテンポ 市川猿之助も強烈な胡散臭さ放つ

『鎌倉殿の13人』大泉×西田、抜群のテンポ

 とはいえ、物語はコメディタッチなシーンばかりではない。時政と義時が新しい目代(国司の代わりに実際に任地に赴いて執務を執り行った者)へ挨拶するため、伊豆の国衙(律令制のもとに諸国に設置された政庁)に訪れた際、代理で現れた堤信遠(吉見一豊)は差し出された野菜を足で踏み潰すと、踏み潰した野菜を時政の顔に押し付けた。この時の義時の表情は、目を見開き、唇を固く閉じ、静かな怒りに満ちていた。信遠が去った後、義時の「父上……」と呼ぶ声は震えている。荒れ狂うような怒りを懸命に堪えていた。その目からは思わず涙がこぼれ落ちる。義時は平家一門が驕り高ぶる姿に怒りをあらわにした。頼朝に対し「戦にも政にも関心ありませぬ」とそっけない義時だったが、この怒りは、確実に、彼の心を動かしている。

 その証拠に義時は、挙兵を躊躇する頼朝に「勝てます、この戦」と口にした。国衙を訪れた際に見た、処分された大量の木簡。味方になりそうな豪族の木簡を調べ、それぞれが収める米の量から民の数を割り出せば兵の数も分かるという。戦に必要な兵力、頼朝に届いた法皇の密旨、そして、夢のお告げ。戦を始める準備が整った。

 また第3回では、市川猿之助演じる文覚も強烈な印象を残した。文覚は町中で平家を罵り、源頼朝の父・義朝の髑髏を持っていると吹聴する。時折見せる鋭い眼力からは強い思惑を感じるが、自信ありげなニヤケ顔を見ると胡散臭さが勝る。頼朝に追い返された文覚は、髑髏を手放すと「いい。ほかにも、まだあるから」と言い捨て、去っていった。頼朝からは歓迎されていないようだが、今後も何らかの形で頼朝に近づくのだろうか。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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