佐々木希が放つ別種の美しさ 『カムカム』奈々はるいの"あったかもしれない未来"?

『カムカム』佐々木希が放つ別種の美しさ

 暗に恵まれた環境でぬくぬく育ったことを小馬鹿にされても気にも留めず、むしろ利用できるだけ利用してやろうという気概すら感じる。そして、そんな奈々の芯の強さや音楽的センスを光臣も認めているからこそ、いつまでも手元に置いているのだろう。どこか優秀な兄亡き後、自分なりの方法で家業を好転させた勇(村上虹郎)を誇らしげに見ていた千吉(段田安則)を彷彿とさせた。いざという場面で父親から意見を求められる奈々は、まだまだ家父長制が根強かった時代から、女性による固定化された性役割からの解放運動が活発になる時代へと変わっていく変革期を象徴している。

 一方で奈々を見ていると、るいの「あったかもしれない未来」を想像してしまう。もちろん、るいはみんなから望まれて生まれてきた子だ。親戚一同からたっぷりと愛情を受けて育ち、裕福な雉真の家で暮らすようになってからは欲しいものは何でも与えられた。しかし、母親に“捨てられた”というトラウマが重なった額の傷が、“ありのままの私で愛される”という根拠のない自信を失わせたのだ。そこからるいは自分の人生に過度な期待を持たないようにしていたが、錠一郎と出会ったことで、控えめながらもまた日向の道を求めて歩き始める。その健気な姿はたしかに、奈々とは別種の美しさを放っていた。

 そんな魅力溢れる2人と三角関係に突入するかもしれないなんて、少しばかり錠一郎が羨ましい。ただ事態は結構深刻で、錠一郎が奈々に手を出して笹川社長を怒らせたという噂がるいの耳に入ってしまう。彼に限ってまさか……とは思うが、第56話では錠一郎のデビューコンサートが延期になったことが明らかに。レコーディング中になぜか上手くトランペットの音が出せず、錠一郎が顔をしかめる表情も映し出された。順調に進んでいた夢への道が途絶えた今、佐々木が「勘違いされやすく鼻につくタイプに見えるかもしれませんが、その心の奥には優しさが隠れていて、すてきな女性だと思いました」(参照:風間俊介&佐々木希、『カムカム』出演 堀之内CP「るいの人生に大きな影響を与える人物」)と語る奈々の魅力に錠一郎が心動かされないか不安だ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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