主演・吉沢亮、大抜擢の笠松将に拍手! 『青天を衝け』第1回とシンクロする粋な最終回に
2021年2月にスタートした大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)が、12月26日についに最終回というゴールテープを切った。
大正から昭和へと元号が移り変わる最終回では、「排日移民問題」「関東大震災」「中国の大水害」と激動の世界情勢が描かれる。栄一は実に91歳という老体。それでも栄一は日本のために、世界の平和のためにと走り続けるのだ。
最終回のタイトルは「青春はつづく」。若かりし頃の姿の栄一が郷里・血洗島の青空の下で全力疾走する、第1話のシーンとリンクさせた情熱的で爽快な終わり方。その姿は一人の青年そのもの。亡くなった後も栄一の青春は大切な家族と多くの友と一緒にいつまでもつづいていく──そんなことをイメージさせる実に見事なラストだ。
この最終回は取り上げたい金言だらけだ。その証拠に公式サイトの、栄一に起きた出来事をピックアップする「今週の栄一」の最終回分もやたらと長い。あえて筆者が特筆するとすれば、「中華民国水災同情会」の会長に就任した栄一が、自宅をラジオ局にし、放送を通じて募金を呼びかけた際のメッセージ。「大丈夫だい。私が言いたいことはちっとも難しいことではありません。手を取り合いましょう」「みんながうれしいのが一番なんだで」──幼き栄一に母・ゑい(和久井映見)が教えてくれた考え方は、アメリカの地で経済人に向けての演説の中で説いた真心と思いやりにも通じている。つまりは、『青天を衝け』が届けたかったメッセージは第1回から一貫して我々に伝えられていたことになる。
また、この最終回はこれからの時代を生きる孫・敬三(笠松将)から見た栄一という、これまでとは違った特殊な視点から物語が語られていく。ナレーションも敬三という、最終回においてはもう一人の主人公と言っても過言ではない。笠松将、大抜擢である。栄一の追悼式の中で、敬三は近くで見てきた祖父「渋沢栄一」とはどんな人物だったのかを話す。
敬三のスピーチを聞いて、脚本の大森美香が取材の中で話していた「見て頂きたいのはただの“偉人伝”ではなく“人間ドラマ”」「栄一さん自身、ただ偉人なだけではなく、とても人間らしい魅力にあふれたパワフルな方」という言葉を思い出した。偉人と呼ばれる成功の裏で、実の結ばない失敗も間違えも多くあった。それでも栄一を突き動かしていたのは「この世を変えたい」という決して消えることのない情熱。家族や恩師、友の支えもあった。天寿を全うした栄一に、敬三は「『お疲れさん』と『よく励んだ』とそんなふうに渋沢栄一を思い出していただきたい」と語る。