高橋一生「露伴は自分の運命と戦っている」 1年ぶりの『岸辺露伴は動かない』撮影を終えて

『岸辺露伴は動かない』高橋一生インタビュー

脚本・小林靖子の作劇のセンス

ーー今回放送になる第4話~6話のそれぞれの見どころを教えてください。第4話「ザ・ラン」は露伴がスポーツジムで笠松将さん演じる橋本陽馬と出会う物語です。

高橋:第4話はとにかく走ります。共演の笠松さんがとても体力があって、身体も相当鍛えている説得力のある方なので、お芝居のしがいがありました。『岸辺露伴は動かない』というタイトルに反して、アクティブに動きまくるのでそこは観ていただけたらなと思います。これまでは精神的な対峙の仕方が多かった露伴ですが、今回はトレッドミルを使った極限の状態での肉体的な戦いです。

ーー肉体的な戦いをしながら露伴を演じるというのは、これまでの演技と違った難しさがあったのではないですか?

高橋:撮影自体はスムーズでした。原作の一気に押し寄せてくる面白さを生身の人間がやるにあたって、現実により近付けていくためにはどんな動きをしたらいいのか、リズムや勢いが消えないように意識して演じていました。

ーー『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ本編からのエピソードである第5話「背中の正面」は、露伴の家にリゾート開発を請け負う会社に勤める市川猿之助さん演じる乙雅三が尋ねてくるところから物語が展開されます。

高橋:第5話は、とにかく猿之助さんがとても面白く、とても怖いです。猿之助さんと対峙していくお芝居が演劇的で、いい意味で緊張感のある現場でした。そんな切迫した中でも露伴は猿之助さん演じる怪異と対峙しながら、反対に生き生きしていきます。

ーー原作と同じく猿之助さんも、高橋さんもブリッジをされているようですが。

高橋:ブリッジは、猿之助さんがとにかくお上手です。また、ストーリーに関しては、脚本の小林(靖子)さんがこれまでどれだけ『ジョジョ』シリーズを読み込んでいて、かつそれを『岸辺露伴は動かない』の世界にどのように落とし込んで繋げているのかがはっきり見えてくるエピソードではあると思います。

ーー第6話「六壁坂」は、妖怪伝説の謎を追う露伴の前に、村一番の名家の跡取り娘である内田理央さん演じる大郷楠宝子が現れます。

高橋:「六壁坂」は内田さん演じる大郷楠宝子が、これまでを総括するキャラクターになっています。これは前回の第1~3話にも共通するんですけれど、第3話の「D.N.A」然り、第6話の「六壁坂」然り、人間的な怖さに迫ってくるところがあります。怪異の裏には人間の怖さが眠っていて、それは「D.N.A」でも静かに怖いなと思っていたことでした。3話目は必ずそういった形に帰結していくところに、小林さんの作劇のセンスを感じていました。また、物語の中で「六つ妖怪がいるんじゃないか」という話があるんですけれど、まだ三つしか出てきていないので、それはなんとなく感じるところではあります。

ーー「まだ3つしか出てきてない」ということも踏まえて、また次回があるとすれば、原作のどのエピソードが実写化してほしいですか?

高橋:一貴さんと一致しているのは「ジャンケン小僧がやって来る!」(『ジョジョの奇妙な冒険』第4部「ダイヤモンドは砕けない」で露伴と戦う大柳賢、通称ジャンケン小僧)です。

ーー今回のエピソードの中には「場所というのは重要だ」「妖怪は場所につく」という露伴のセリフがありますが、『ジョジョ』の次回作が『JOJOLANDS(仮)』で「LANDS」は直訳すると「土地」という意味なんですよね。台本を読んでいてなにか荒木飛呂彦イズムというか、引力のようなものを感じずにはいられませんでした。例えば、『ジョジョ』シリーズの「悪魔の手の平」や「壁の目」とか、荒木先生の中で場所とか土地は重要なファクターな気がしていて。

高橋:第4部の杜王町辺りからそういうものはとても強くなっている気がします。「懺悔室」(『岸辺露伴は動かない』のエピソードの一つ)でも、宗教観が根付いたあの場所でなくてはならない何かがある。僕自身も場所に縛られてしまう何かという存在がきっとあるのではないかと思っていて。土着的なものは人智を超えてしまっているので怖さを感じます。例えば、僕は幽霊は怖くないのです。それ以上のものに会ってしまいそうになる感覚は恐ろしいと思います。それは土地だったり複合的な集団だったり。幽霊さまざまなものがどんどん蓄積していった結果、よく分からないものになっているであろう血塗られた土地はあると思うんです。日本の土着的な怖さは人間の知恵が及ぶところではない。だからこそ、そういうものに立ち向かって行く時に楽しんでしまう露伴という像を、とても面白く感じるんです。「ジャンケン小僧」の時もそうですけれど、子供と小競り合いしているように見えて、露伴は自分の運命と戦っているんです。そういう生き方は潔くて素敵だなと思いながら読んでいます。

■放送情報
『岸辺露伴は動かない』
NHK総合にて放送
第4話「ザ・ラン」 12月27日(月)22:00~22:49
第5話「背中の正面」 12月28日(火)22:00~22:49
第6話「六壁坂」 12月29日(水)22:00~22:49
(第1~3話:2020年12月放送)
出演:高橋一生、飯豊まりえ
第4話ゲスト:笠松将
第5話ゲスト:市川猿之助
第6話ゲスト:内田理央
第4話:真凛、中村まこと、増田朋弥、小水たいが、濱正悟、春木生
第5話:栄信、渡辺翔
第6話:渡辺大知、中島歩、井上肇、白鳥玉季、吉田奏佑ほか
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔
演出:渡辺一貴
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
制作統括:鈴木貴靖、土橋圭介、平賀大介
制 作:NHK エンタープライズ
制作・著作:NHK、ピクス
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
(c)NHK・PICS

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