『ラジハII』特別編は「劇場版」での裕乃の活躍を示唆? カウントダウンの仕掛けも
優秀な放射線科医になるため、唯織(窪田正孝)が師事していたピレス教授のいるワシントンへと旅立った杏(本田翼)。『ラジエーションハウスII 〜放射線科の診断レポート〜』(フジテレビ系、以下『ラジハ』)は前週のエピソードで本筋のストーリーは幕を下ろし、来年春に公開される劇場版へと向かう。12月20日に放送された「特別編」は、裕乃(広瀬アリス)の視点からこの第2期を中心に『ラジハ』の“これまで”の流れをおさらいしていく。第1期の際にも最終回後に「特別編」なるエピソードが放送されたが、それとは趣がだいぶ異なる一種の総集エピソードといえよう。
ある日ラジエーションハウスに、小野寺(遠藤憲一)の息子の大樹(田中奏生)がやってくる。冬期講習の振り込み用紙を持ってきたものの、小野寺が休みだったためそれを裕乃に託す大樹は、たまたま居合わせたたまき(山口紗弥加)たちに「なぜ放射線技師になったのか?」という漠然とした問いを投げかける。その質問から、大樹は放射線技師になりたいのではないかと考えたラジハのメンバーたちは、仕事見学を提案。案内役として張り切る裕乃は、マンモグラフィを受ける男性患者やホームレスなど、次から次へとやってくる患者に真摯に向き合う姿を大樹に見せるのである。
この大樹が最初に登場したのはシーズン1の第2話だ。母親から託された離婚届を小野寺に渡すために甘春病院にやってきて、たまたま倒れ込んでしまった女性を発見する。その際に、小野寺が鏑木(浅野和之)に頭を下げている姿を見て失望の眼差しを向ける。しかしその後、シーズン終盤に再登場した際には友人が不登校になっていることを相談し、当時ラジハで診ていた甘春元院長(佐戸井けん太)の症状を参考に小野寺は友人に検査を受けさせるよう勧める。その結果、大輝の友人に脳髄液減少がみられることがわかり、父に感謝を抱くというやり取りが見受けられた。
そうした流れを汲むように、今回のエピソードのなかでは大樹が将来の進路に悩み、裕乃たちの働きぶりを見ながら最終的に医師を志すというオチが待っている。その典型的なストーリーよりも重要なのは、これまでこのドラマが描いてきたラジハのスピリットを紹介していくことだ。「検査したらそれで終わりなんですか?」と問う大樹に対して裕乃は「私も最初はそう思っていた」と呟く。たしかにこのドラマは第1期の頃から、唯織という天才的な技師であり医師でもある主人公を軸にしながらも、普段なかなか触れることのない放射線科の仕事ぶりを視聴者に見せ、その空間における最も“下っ端”である裕乃の視点によって視聴者の発見を促してきた。第2期では多少その空気が薄れていたのは、裕乃というキャラクターが技師として成長を遂げたからという見方もできよう。