上白石萌音が牽引した『カムカムエヴリバディ』安子編 少女から母への巧みな演じ分け

上白石萌音が牽引した『カムカム』安子編

 連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK総合) にて、初代ヒロイン・安子の14歳から25歳までの人生を共に歩み続けてきた上白石萌音。実年齢は23歳で、元々童顔でとても愛らしい上白石が、本作では“母親の表情”を見せ、これまでにない新しい顔を引き出している。

 上白石は本作が朝ドラ初出演。映画『君の名は。』で三葉の声優を務め、透明感ある声や存在感に注目が集まり、さらに『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)でのドSなドクター・天堂(佐藤健)との胸キュンラブストーリーを繰り広げるナース・七瀬役で天真爛漫なヒロインとしての地位を確立した。『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)でも恋に仕事に困難に立ち向かいながらも成長していくヒロイン・奈未役を好演した。

 彼女が持ち合わせているもはや天性の才能とも言える圧倒的な“陽”オーラ、親しみやすさ抜群の愛されキャラで周囲を自然と笑顔にしてくれる愛嬌はまさに和菓子屋「たちばな」の看板娘に相応しく、『カムカムエヴリバディ』序盤に充満していた“多幸感”の象徴的存在だった。

 後に夫となる稔(松村北斗)との初恋を通して描かれる様々な “初めて”との出会い、初々しさ、煌めき、心が動く瞬間をとんでもない純度で見せてくれたからこそ、その後起きる戦争の理不尽さ、惨たらしさがより浮き彫りになり強調された。

 娘・るいが生まれてからも、もちろんヒロインである安子を中心に物語は展開するものの、彼女の中での優先順位、生きる目的がまるで様変わりし、明確になる変化感をなんとも自然に見せてくれた。

 ふつふつと湧き出る母親としての自覚、そして稔が残してくれたあまりに大切すぎる大きな存在を保護する者としての責任、決意や覚悟がるいの成長と共に安子の中でもどんどん育っていく様子を力強く紡ぎ続けてくれている。安子自身の中で何を差し置いても一番に守りたい絶対的存在として娘のことが念頭にある様子、安子にとってはるいと一緒に生きること、今は亡き稔の願いである、るいに“ひなたの道を歩ませること”が揺るぎない最優先事項であり、ある意味自分の人生の主人公をあっさりと“自分軸”から“るい軸”に喜んで譲り渡す、差し出すそんなスイッチを、娘を見守る眼差し、るいの名前を呼ぶその声色にたっぷりとたたえていた。そして安子の中で“迷い”という2文字が完全になくなる。

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