『のほほん』が描く結婚以外の選択肢 ルームシェアの酸いも甘いも見せるリアリティを分析
ただ、『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』では、そういったネガティブな要素を優しく包み込み、最終的には“のほほん”に昇華している。もちろん、エリコとミホが本来持つ人間性、木村多江と安藤玉恵の演技力あってこそであることは間違いない。それでも、ルームシェアの酸いも甘いも余すことなく見せることにより、“結婚せずにルームシェア”という選択肢の説得力が増す。視聴後には毎回「大変そうだけどやっぱり楽しそう」「結婚しなくても穏やかに過ごせるかも」という前向きな気持ちにさせてくれる。
また、中華料理店・朝來やフィットネスジム・ブーカスなど、2人の行きつけは似ており、1人になりたくても鉢合わせする可能性が高い。にもかかわらず、様々な行きつけ先にいる人たちは、2人のルームシェアに理解を示し、各々の良き相談相手としてサポートしてくれている。
“ご近所付き合い”が煩わしいものとされ、もはや死後になりつつある昨今。エリコとミホによるのほほんとした掛け合いだけでなく、近隣住民の優しさがすぐ傍にある古き良き生活様式にもほっこりさせられる。
懐かしいけど新しい。新しいけど懐かしい。基本的にのほほんとした気持ちで視聴できるが、今の時代を生きるためのヒントが散りばめられ、ハッとさせられるシーンも多い『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』。阿佐ヶ谷姉妹の生き方が、一つのロールモデルとして確立される未来は近いのかもしれない。
■放送情報
よるドラ『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』
NHK総合にて、毎週月曜22:45〜23:15放送(全7回)
原作:阿佐ヶ谷姉妹著『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』
脚本:ふじきみつ彦
音楽:高城晶平(cero)(高城の「高」はハシゴダカが正式表記)・王舟
出演:木村多江、安藤玉恵、いしのようこ、中川大輔、楠見薫、山脇辰哉、宇崎竜童、研ナオコほか
制作統括:三鬼一希、櫻井壮一
演出:津田温子、堀内裕介、新田真三、佐藤譲
写真提供=NHK