段田安則は“仕事ができる男”がよく似合う 『カムカム』を引き締める千吉さんの説得力

段田安則は“仕事ができる男”がよく似合う

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)の第21話で、ヒロインの安子(上白石萌音)に再婚を勧めた義父・千吉(段田安則)。出征した夫・稔(松村北斗)が戦死したことで、義母の美都里(YOU)が安子に強く当たるのを心配して、安子の今後のことを思っての考えであった。しかし、安子が娘のるいを置いて家を出る道を選ぶはずはない。第5週は、雉真の家を出た安子とるいの大阪での暮らしが描かれた。そのきっかけを作ったのが千吉であり、頑に戻ることを拒む安子に現実を突きつけたのも千吉だった。

 段田安則演じる千吉は、現実的で正しく、至極真っ当な意見の持ち主。地元岡山で「雉真繊維」を足袋の製造から始め、一代で築き上げた一流の経営者でもある。跡継ぎの稔が銀行の頭取の娘の縁談を断り、小さな和菓子屋の娘である安子と結婚したいと言い出したときも、美都里のように感情的になったり、安子に嫌がらせをしたりはしなかった。愛する人との結婚に甘い夢を見ている稔に対して、冷徹に現実を突きつける厳格な父として2人に立ちはだかる壁になったのだ。

 ただの仕事人間で、事業のことしか考えていない存在であれば、真っ直ぐに育った稔だとしても反発したり、反抗することがあるだろう。けれども、千吉の場合は、家族のことを大事に思った上で正論を言うので、結局は誰もが千吉には従うことになってしまう。野球一筋だった勇(村上虹郎)でさえ、父・千吉の一言で野球をやめている。

 第25話で千吉は安子のもとを訪れ、岡山に戻るよう説得した。その受け入れを拒否した安子に対して声を荒げたのは、恐らく誰も千吉の発言に対して従わない者はいなかったからだろう。再婚も勧めない、堂々と稔の嫁としていればいい、という申し出に対して、拒むのは間違いだと最初から決めているのだ。美都里の状態も、安子の性格も見抜いた上での千吉の決断だろうが、誰にも相談せず、実行に移してしまうところがワンマン社長(死語?)らしい。

 ただ、独善的な面がありながらも、周囲が納得してついていくだけの人徳もある。安子に雉真の家を出ることを提案した勇でさえ、母娘2人だけの生活がどれほど危険か現実を目の当たりにして、父の言葉の重さを痛感した。

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