『カムカムエヴリバディ』で広がる小野花梨の可能性 きぬちゃん役でさらなる飛躍へ
そんな小野だが、まだ23歳。これが朝ドラ初出演というのが意外である。子役からキャリアをスタートさせ、すでに俳優歴は15年にものぼるのだ。現在は、初主演を果たした映画『プリテンダーズ』が公開中であり、いまの時代の若者の気持ちを代弁するかのような、等身大でエネルギッシュな彼女の演技に圧倒される。そしてこれまた、「映画初主演」というのが意外であった。
たしかに小野のバイオグラフィーを振り返れば同作が「初主演」なのだが、これまでの作品における彼女の好演ぶりがいくつも頭に残っており、「すでに主演作はある」と錯覚していたのだ。全編即興劇で描かれた『無限ファンデーション』(2018年)への参加や、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018年)では物語の転換点を生み出す不良少女役を演じていたことなど、振れ幅大きく、さまざまな役や作品に適応する優れたプレイヤーなのである。一つひとつの作品で印象深い演技を残してきた小野だが、それぞれの作品でまったく異なる人物を立ち上げてきたからか、特定のイメージというものがない。『プリテンダーズ』と『カムカムエヴリバディ』の演技を見比べてみると、なおさらそのことが分かるだろう。
さて、どんなタイプの作品の、どのような役にもフィットしてきた小野花梨。朝ドラでの活躍でその名が広く知られることによって、引く手数多の俳優の一人になることは間違いないだろう。彼女を主演とした作品を作る動きなど、立ち位置も変わってくるのではないだろうかと思う(『プリテンダーズ』の公開によって、すでにそうなっているのかもしれないが)。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK