『映像研には手を出すな!』が描いた創作にかける情熱 再放送を機にその魅力を紐解く

「最強の世界」を魅力的に描く演出力と、『SHIROBAKO』との相違点とは

 そうやってみどりたちの情熱が視聴者である我々へと見事に伝わってくるのは、大胆不敵な映像表現があってこそだろう。みどりたちが思い描く「最強の世界」は、まるで彼女たちの目の前に現れたり、彼女たち自身がその世界に入り込んだりしたかのような形で描かれる。

 彼女たちの想像力によって繰り広げられる光景がいかに魅力的なものであるかが、我々にも直感的に理解できるのだ。

 簡単には伝わりづらい突飛な概念・状況をアニメーションだからこそ可能なダイナミックさで、「そこにあるもの」として描く手法は、湯浅政明監督作品の多くに共通している。『映像研には手を出すな!』は、そうした手法との相性の良さも、原作つきの湯浅作品の中でも屈指のものだろう。

 本作と同じく、Eテレで近年再放送された「アニメーション制作」を描くアニメといえば『SHIROBAKO』だ。

 『SHIROBAKO』はアニメ制作会社を取り巻く群像劇を通して「仕事としてのアニメ制作」を描いており、『映像研には手を出すな!』とはその射程が大きく異なっている。だが、どちらも創作行為に関わる者にとって(作り手だけでなく受け手にとっても)、実に多くの示唆をくれる作品だ。

 『映像研には手を出すな!』は創作にかける情熱の源泉、『SHIROBAKO』はそういった情熱を持ち続けるための生き方を描く。いずれも物語として素晴らしいものであるが、同時にこれから先の人生における創作とのよりよい関わり方のヒントが散りばめられている。

 「好き」とはなにか?  その溢れる想いを形にするために必要なものはなにか?  それを受け取った我々はなにを思い、どんな行動を取るべきか?  『映像研には手を出すな!』はさまざまな形で「創作を愛する自分の原点」を思い出させ、よりハッキリとした輪郭を与えてくれる。

■放送情報
TVアニメ『映像研には手を出すな!』
Eテレにて、毎週日曜19:00〜再放送中
原作:大童澄瞳(小学館『月刊!スピリッツ』連載中)
キャスト:伊藤沙莉、田村睦心、松岡美里、花守ゆみり、小松未可子、井上和彦
監督:湯浅政明
脚本:木戸雄一郎
音楽:オオルタイチ
キャラクターデザイン:浅野直之
美術監督:野村正信
色彩設定:中村絢郁
撮影監督:関谷能弘
編集:齋藤朱里
音響監督:木村絵理子
アニメーション制作:サイエンス SARU
OPテーマ:chelmico「Easy Breezy」
EDテーマ:神様、僕は気づいてしまった「名前のない青」
(c)2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
公式サイト:eizouken-anime.com
公式Twitter:@Eizouken_anime

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