『ハンオシ』倉科カナ演じる美晴は離婚してしまうのか 複雑に絡む“夫婦関係”

『ハンオシ』複雑に絡む“夫婦関係”

 「美晴と兄に離婚してほしくない気持ちも本当で、でも逆の気持ちも」「思ってしまったんです、兄が美晴を幸せにできないなら僕がって」とは百瀬(坂口健太郎)が明葉(清野菜名)に打ち明けた本心だが、これは翻って「百瀬さんが幸せでいてほしいから百瀬さんの片想いの成就を願う気持ちも本当で、でもたとえ偽装だろうが百瀬さんとの結婚生活を続けたいというのもまた本音」という明葉の気持ちともリンクするのが切ない。

 妊活のすれ違いを発端に家を飛び出した兄の妻・美晴(倉科カナ)と百瀬、明葉の奇妙な同居生活がスタートした『婚姻届に判を捺しただけですが』(TBS系、以下『ハンオシ』)第5話。本作に出てくる皆がそれぞれに実は片想い中で、一方通行の矢印ばかりで物語が進行している。「私じゃダメですか?」という言葉を飲み込みながら日々過ごしているのだと思うと、人生ってほろ苦く、時に残酷だ。

 結局、兄夫婦の関係を修復したのも、百瀬から兄・旭(前野朋哉)への実感のこもった問いかけだったのも残酷だ。「別の人の隣で笑ってる美晴を見て、兄貴はそれでいいの?」この百瀬からのトドメの一言がなぜこんなに説得力を持っているかって、それは彼が自分自身にこれまで何度も何度も反芻し自問自答してきた問いだったからだろう。旭も旭で、美晴の気持ちが自分からどんどん離れていることに気づいていたがそれを認めることからも、向き合うことからも逃げていたのだとこぼす。旭にしたって美晴にしたって、百瀬が思っているよりもずっといろんな想いを笑顔の下に抱えながら“夫婦関係”を続けていたのだ。

 前話でも美晴は「理想の家族像のために結婚相手を選んだ」とこぼしていたが、どうやら自身の父親とは正反対の人を選ぼうと心に決めていたらしい。父親がどんな人かを聞くと、出てくる特徴全て見事に百瀬と合致する。思わず明葉は美晴に「お父さんみたいなタイプの人を好きになったことがあるか」と聞くが、そこで返ってきたのが「何でも白黒つけようとしちゃダメよ」という美晴からの回答。これは美晴と明葉の元々の性格の違いもあれど、既婚者と未婚者(現在の明葉は形式上は既婚者だが元々結婚願望は皆無で、マインドは今も未婚のままに近いだろう)の違いとも言えるかもしれない。どこか少しは目を瞑ってやり過ごせるかどうかの違いにも思える。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる