『カム・アンド・ゴー』が描くのはリアルな日本? リム・カーワイ監督とLiLiCoが語る

リム・カーワイ監督とLiLiCoが語り合う

 11月19日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開される『COME & GO カム・アンド・ゴー』。監督を務めたリム・カーワイと映画コメンテイターのLiLiCoが作品について語った。

 本作は、中国、香港、台湾、韓国、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ネパール、日本の9カ国・地域の人々が、頭上の飛行機が鈍く光を放つ大阪の空の下、平成から令和に変わった今の日本でサバイブするリアルを描く物語。

 共に日本で長い間暮らし、日本語もネイティヴレベルで、日本をよく知るカーワイ監督とLiLiCo。カーワイ監督にとって“ずっと会いたかった人”がスウェーデン出身のLiLiCoだったといい、その念願が叶い今回の対談が実現。開口一番、監督が「日本で暮らす外国人として、僕の映画を誰よりもわかってくれるんじゃないかと思って」と言えば、LiLiCoは「たしかに私ほど自信を持って『この映画のキャラクター、みんなリアルにいるよ』って言える人はいない」と返す。

LiLiCo

 そんなLiLiCoは、「作品を拝見してとても面白かったです。最初、上映時間が2時間38分と知って、『うっそー! 『トランスフォーマー』並みの長尺じゃん!』って思ったんだけど(笑)、実際に観たらもう、のめり込んじゃいました。あれだけ国籍も年齢もバラバラな、たくさんのキャラクターがいながら、一人一人の思いがしっかり描かれていて、まるで彼らと一緒に時間を過ごしているみたいな感覚になれた。2時間38分は必要だなと納得しました」と語る。それを受けカーワイ監督は、「この映画は、日本とアジア諸国の関係における現状を、批判も断定も加えずに描こうと作りました。定点観測みたいなイメージで、キャラクターそれぞれの生きざまを見せたつもりです」と作品の背景を解説。

 「ドキュメンタリーなのかフィクションなのか、そのちょうど中間を行くような描き方にいい意味で驚きました。私は個人的に近年、日本という国について改めて考えさせられるような映画がブームになってきている気がしていて。たとえば、ハーフの問題を取り上げた『WHOLE ホール』(2019年)っていう青春映画とか」とLiLiCoが話すと、カーワイ監督は「今回の映画を撮影したのはコロナ禍前の2019年ですが、たしかにその頃から外国人やハーフを中心人物にした日本映画が増えてきた印象があります。特にハーフのコンプレックスは可視化されづらいので、長い間描かれてこなかったんですよね。この映画にも、日米のハーフのケンジというキャラクターが登場します」と反応。「日本人は外国人に憧れている一方で、ときに平気で粗末に扱います。ハーフの子どもも日本の学校に通った場合、『え、ハーフなの!?』ってもてはやされる反面、必ずと言っていいほどいじめを受ける。母国のスウェーデンでは、ハーフなんて普通なのに。みんないろんな人種のミックスだから」というLiLiCoの言葉には、カーワイ監督も「マレーシアも同じです。中華系とマレー系のミックスはいくらでもいます。『ハーフ』という言葉自体がまずないですよね」と同意した。

 また、「日本人は海外の人との触れ合い方を知るべきだし、英語を一刻も早く学ばないといけないと思います」とLiLiCoが問題提起すると、カーワイ監督も「はっきり言って、日本人にはコミュニケーション能力が足りていないですよね。要するに『よそのものをどう受け入れていくか』という点において、まだ成熟しきれていない」と同意。「劇中で、日本語学校の校長がベトナム人のナムに向かって『この学校にお友達。フレンドもね、たくさんいますから』って言いますよね。あの全然英語話せていない姿が、もうすっごい既視感で(笑)。入国管理局もそうなんですよ」というLiLiCoの言葉に、「そうそう、わかる! 僕は、今は日本の永住権を取得したんですけど、以前は行っていましたから」と頷くカーワイ監督。「日本はすでに移民大国ですから、日本人には、海外にもっと興味を持ってほしいとも思います。すでにさまざまな社会の綻びが生じていますが、外国人が増えることで今後もますます深刻化していくはず。日本は今ちょうど、問題点を集約している時期なのかなと感じます」と自身の考えを述べた。

 さらにLiLiCoは、尚玄が演じるAV制作会社の社長がリアルに感じたといい、「ああいう、ほぼ詐欺師みたいな人って実際にいますよね。演じている尚玄が友達なのもあって、もう笑っちゃった(笑)。私が日本に来た当初、演歌歌手として地方を回っていたとき、あんな人にいっぱい会いましたから。『ここで歌っていきなよ』と言いながら、結局ギャラを払わないとか。ただ、マレーシア人のウィリアムだけはフィクションですね。あれだけイケメンで、仕事もできて、妻に一途。いませんいません。みなさ~ん、彼だけは『ホリデイ』(2006年)のジュード・ロウばりにフィクションですよ~!(笑)」と笑い交じりに語る。

リム・カーワイ監督

 「ウィリアムとマユミが出会うストーリーですが、当初のキャラ設定は、たった5時間しか大阪に滞在しないエリートサラリーマンと、デリヘルで働いている若い女性として考えていたんです。ウィリアムがほんの短い時間で、貧困女性を取り巻く日本の現実に触れるって、ディープでいいかなと。最終的には、もっとロマンチックな展開にしましたけどね」と制作背景を明かすカーワイ監督。そんな監督に対して、LiLiCoは「監督がこうして、日本のことをちゃんとわかっているからこそ成立している映画ですよね。しかもこれをもし日本人の監督が撮ったら、ただの嫌味になってしまいかねない。外国人の監督が手がけているからこそ観られるわけです。監督が日本語ペラペラということも、どんどん広めた方がいいと思いますね」とカーワイ監督の手腕を絶賛。

 「渡辺真起子さんとか、いい日本の役者さんも出ているし。彼らもこれから、この映画に参加したことの値打ちがどんどんわかってくると思う。というか……、もはや私も出たかったです。マユミがAV撮影に参加させられそうになるシーンで、『ああもう! 私も全然脱ぐのに』と思った……って、それは冗談ですけど(笑)」と続けると、カーワイ監督は「いつか出てほしいです! 僕の映画のミューズとして(笑)」と反応。そんな監督に対して、LiLiCoは「ぜひお願いします!(笑)」と冗談交じりに答えた。

■公開情報
『COME & GO カム・アンド・ゴー』
11月19日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開
出演:リー・カーション、リエン・ビン・ファット、J・C・チー、モウサム・グルン、ナン・トレイシー、ゴウジー、イ・グァンス、デイヴィッド・シウ、千原せいじ、渡辺真起子、兎丸愛美、桂雀々、尚玄、望月オーソン
撮影:古屋幸一
音楽:渡邊崇
プロデューサー・監督・脚本・編集:リム・カーワイ
エグゼクティブプロデューサー:毛利英昭、リム・カーワイ
制作協力:KANSAIPRESS、株式会社リンクス、Amanto Films
製作:Cinema Drifters LLC
配給:リアリーライクフィルムズ/Cinema Drifters
2020年/158分/日本語・英語・韓国語・中国語・ベトナム語・ミャンマー語・ネパール語など/ビスタサイズ/5.1ch/DCP・Blu-ray
(c)cinemadrifters
公式サイト:www.reallylikefilms.com/comeandgo



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