デジタル世代が直面する問題を描く 『ロン 僕のポンコツ・ボット』が示す未来への活路

『ロン 僕のポンコツ・ボット』の問題提起

 イギリス発、気鋭のCGアニメーションスタジオ「ロックスミス・アニメーション」の初劇場作品『ロン 僕のポンコツ・ボット』が公開された。驚かされるのは、その映像の完成度の高さと、物語に用意された奥行きだ。

 当初はパラマウント社と契約していた同スタジオは、現在ワーナー・ブラザースと提携しているが、本作『ロン 僕のポンコツ・ボット』については、20世紀スタジオから送り出される予定になっていた。なので今回に限り、20世紀スタジオの主要株主であるディズニーによって配給されたのだ。そんな紆余曲折を経た本作は、新進のスタジオの作でありながら、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオとも勝負できる、堂々たる一作となっていた。

 “Bボット”と呼ばれる、子ども用のロボット型デバイスが大ヒットし、それが世界中の子どもたちに普及するようになった近未来。自己充電もできるBボットは、絶えず子どもたちに付き添い、インターネットを駆使した様々な機能で重宝されているというのが、本作の設定だ。

 Bボットの目玉となっているのが、自分と趣味の合う友達を結びつけるマッチング機能。主人公である、中学生の男の子バーニーは、学校の生徒たち全てがBボットを所有してスムーズに友達を作っているなかで、一人孤立している存在である。そんなバーニーのもとにも、ついにBボット“ロン”がやってくることになる。しかし、ロンは故障のためにほとんどの機能が使えず、とぼけた言動を繰り返したり、バーニーの祖母から教えられたダンスをところ構わず踊り出すなど、おかしな行動を繰り返すばかり……。

 『アイアン・ジャイアント』(1999年)、『ベイマックス』(2014年)、『ネクスト ロボ』(2018年)など、子どもとロボットの友情を描いたアニメーション作品はいくつも作られているが、本作の特徴は、人間以上の情報処理能力を持っているはずのロボットが、底なしのおとぼけキャラだという点である。その意味で本作は、石ノ森章太郎原作のTVドラマ『がんばれ!!ロボコン』を想起させる親しみやすさがある。

 だが、バーニーにとっては笑って済ませられない。通常なら内蔵されたプログラムによって、持ち主のパーソナリティを記憶し、その個人データと通信を活用して友達を募集することができるBボットなのだが、この肝心な機能が使えないため、バーニーの学校での状況は何も改善されないのだ。

 しかし、ここから本作の物語が面白くなってくる。バーニーは、会話はできるがBボットの基本的なプログラムがインストールされていないロンに、友達とはどんなものか、自分の性格や趣味はどんなものなのかを、直接語りかけて教え込んでいくという、アナログな荒技に出るのである。そしてロンもまた、独自の判断でバーニーの友達を募集するビラを街じゅうに貼り付け始めるなど、最新のデジタル機器とは思えないアナログぶりを見せる。そして実際に集めてきたのは、バーニーとは何の共通点もなさそうな地域住民だった。

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