新井順子Pが『最愛』で叶える“見たい”こと “視聴者の考察”採用の可能性も?

新井順子Pが『最愛』で叶える見たいもの

ドラマの制作現場は「見たい」を叶えていく場所

――今回の舞台は岐阜県の白川郷ということですが、ここにはこだわりが?

新井P:白川郷には、単純に私が行ってみたくて(笑)。基本的に、私のドラマは私の見たいこと、やりたいことを叶えていく場所なんですよ(笑)。大輝が陸上部なのも、私が箱根駅伝が好きで。駅伝のシーンがやりたいということだけで通しました。「白川郷」と「陸上部」の2点を踏まえて、どう出会わせるかと考えたとき、高校野球のドキュメンタリーを見ていたら、寮母さんが自宅を改築して住まわせて、お母さんのようにご飯を食べさせているシーンがあったので「それいいな」「ここに主人公がいれば、恋が生まれるかも!?」と。「なんで陸上なの? 撮影すごく大変なのに!」って塚原あゆ子監督にはいつも大変なことをお願いしています(笑)。

――塚原監督は以前「血の出るシーンは張り切ってしまう」というお話を聞いたことがあります。

新井P:ハハハ。あんまり血がすごいと私がカットしちゃうから、今回はちょっと工夫しているのかもしれないですね。血が流れる場面で、ちょっと色がおかしなことになる演出のチャレンジがあるんです。とある部屋をまるごと飾りを変えて同じシーンと撮ったりして、白川郷の美しい世界に相反する異様な世界が強調されているんですけど、最初みんな「どういうこと?」って誰もついていけてなくて(笑)。あと、第1話では梨央が告白しようとしたシーンも、吉高さんに「えー?」ってツッコまれていました。

――『学校へ行こう!』(TBS系)の「未成年の主張」みたいな流れですか(笑)?

新井P:そうですそうです! 「スタンドの上と下で」というのは私が言ったんですけど。「ということは、未成年の主張かな?」となったらしく。いや、そう言ったわけじゃないんだけど(笑)。もしかしたら俳優陣が一番の被害者かもしれないですね。

――(笑)。ですが、キャストの方々へのインタビューでは塚原監督がすごく自然な流れで撮ってくれることも魅力だとおっしゃっていました。

新井P:そうなんですよね。通常、セリフって台本の順番通りに言うじゃないですか。でも、ときどき俳優さんのリズムで「順番間違えた」ということもあるんです。そういうとき塚原監督は「そのままでいいです。それが出たということは、そういう感情になっているはずだから」と活かすんですよ。やりたいことは、台本通りのものを作ることじゃなくて、関係性をどう描くかだから、それで見えてくるものがあるのなら、それがいいって。今回のドラマだと梨央と大輝が出会って2年、梨央と加瀬が共に歩んで15年の時間を全部描くことはできないんですよ。でも、その関係性を座るときの近さなど細かなところで見せていこうと演出しているのを感じますね。

――なるほど。ほかにもこだわって作られているところはありますか?

新井P:サスペンス作品はダイジェスト映像がないと「先週どうなったんだっけ?」となってしまうんですが、そのまま流すと面白くない。なので、第1話では大輝が、第2話では梨央が、とナレーションの語り手を変えていくことで、その回を誰の視点で見ていけばいいのかをアテンドしていく形にしています。あと、こだわっているところ……私、細かいんですよね。たとえば「今の箸の置き方いい!」とか現場ではごちゃごちゃと注文つけてます(笑)。 大輝にはいつかTシャツの袖を肩までまくって欲しいとお願いしたり、加瀬さんには何も言わずとも阿吽の呼吸でいてほしいとか。“不器用なんだけど仕草がかわいい”みたいなところが、萌えになればいいなって思っています。

――そうした細かな仕草のアイデアはどこからくるのでしょうか?

新井P:その場で思いついたことが多いですが、もしかしたら街でやってる人たちを見てるのかもしれないですね。「この前カップルがこんな感じでイチャコラしててさ!」みたいなのあるじゃないですか。そういうのをキャストさんたちで見てみたいって思っているところはあります(笑)。

――新井さんの願いを叶えるという意味では、主題歌も念願の宇多田ヒカルさんですね。

新井P:そうなんです。しつこくオファーして、もしかしたら吉高さんにお願いするよりも先にオファーしていたくらい(笑)。なぜなら、企画書を書いているときに「SAKURAドロップス」を流して書いていたので、主題歌は宇多田ヒカルさんしかいないと思っていました。学生時代からライブにもすべて行っていましたし、音楽番組の観覧とかもしていたくらい。それは、吉高さんも同じだったみたいで。2人して「神!」と呼んでテンション上がりました。

――初めて「君に夢中」を聴いた時はいかがでしたか?

新井P:「さすが宇多田ヒカル!」って思わず呼び捨てにしちゃう感じというか(笑)。とにかくカッコよくて、サウンド感が一歩先に行っているなと思いました。ただ一方で、曲の構成が複雑だからこそ、ドラマの中でどうやってかけたらいいんだろうって模索するところはありますね。1話はいいところでピタッと梨央と大輝のシーンにハマってよかったなと思いました。あとは歌詞が梨央のこと、それから吉高さんのことを想像して書いているような感じがして、宇多田さんからみたらそういうふうに見えているんだと思えるのもうれしいですね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる