『明るい映画、暗い映画』 ストア限定付録「深田晃司×渡邉大輔 対談」一部公開

「深田晃司×渡邉大輔 対談」一部公開

 「リアルサウンド映画部」運営元・blueprintより刊行中の批評家・渡邉大輔初の評論集『明るい映画、暗い映画 21世紀のスクリーン革命』。リアルサウンド映画部では、本著のblueprint book store限定付録「深田晃司監督×渡邉大輔対談 “2007年の世代”のスクリーン革命」の一部を抜粋、掲載する。

 同著は、気鋭の批評家・映画史研究者である渡邉大輔による初の評論集。インターネット、スマートフォン、SNS、Zoom、VR、AR、GoPro……新たなテクノロジーによって21世紀の映画はどのように変容したのかを考察する、2021年ならではの映画批評となっている。

 「明るい画面」と「暗い画面」という見立てから、これからの映画の可能性を読み解く画期的論考を収めた第1部、『君の名は。』『天気の子』『鬼滅の刃』『ドライブ・マイ・カー』など、話題のアニメ・映画を鋭く論じた第2部、合計328ページのボリュームとなる。

 blueprint book store数量限定の付録となる、本著でも論じられている深田監督と渡邉の対談は、作家と批評家というそれぞれの立場から現代における映画のあり方を語り合う、充実かつ貴重な内容となっている。

映画に他者性を導入するということ

深田晃司監督

深田晃司監督(以下、深田):渡邉さんの論考は毎回読ませていただいています。自分では気づかない発見があって、すごく面白いです。よく私は監督と作品を親と子の関係にたとえるんですが、それはつまり一番近くにいる他人でしかないということ。親は子どものことが全部理解できているかといえば、全然そんなことはない。むしろ子どもの友人の話を聞いて我が子の意外な一面を初めて知るなんてことがありますよね。同じように観客の批評や感想を読んで初めて「自分はこんなものを作ったんだな」と気づいて、更新されていくんです。

 今回は「明るい画面」と「暗い画面」という文脈で論じられていました。考えたことがない視点で、とても面白かったです。その際に論じていたホワイトヘッドの「プロセスの哲学」は、もともと自分もすごく共鳴をしていました。ただ自分の作品との関連性は意識したことはありませんでした。だから潜在的な関心と結びつけて、具体にしてくれたと感じました。自分の子どもの知らない面を教えてくれる友人のような批評でしたね。いい友人なのか、悪友なのかわからないですけど(笑)。

渡邉大輔

渡邉大輔(以下、渡邉):テレビドラマが元の『本気のしるし〈劇場版〉』は、全体的に光を抑えていて、画面を暗く設計しているように感じました。実際はどう演出されましたか? また、深田さんが映画を作るうえで光と影のバランスについて考えていることはありますか?

深田:『本気のしるし〈劇場版〉』は、一般的なテレビドラマと比べるとおそらくだいぶ暗かったのではないかと思います。ただ意識して極端に暗くしたわけではなく、いつもの映画の感覚と同じでした。光は撮影監督や照明技師の方と一緒に作っていますが、普段から陰影は強めにお願いすることが多いんですね。なぜかを考えてみると、結局、自分が映画を好きになった原点がビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』だったからだと思います。ヨーロッパの映画は比較的陰影がくっきりしているイメージが強いですが、これを日本で作ろうとすると、ある程度意識的にならないと難しいんです。ヨーロッパの部屋は複数の間接照明で照らすので陰影ができるんですよね。それに対して日本の一般家庭は蛍光灯での天井照明が主流でフラットな明るい光になってしまう。だから、ナチュラルさを犠牲にしてあえて間接照明っぽく、陰影を強く作ってもらうことが多いですね。

渡邉:深田さんは非常に批評的な監督だと思っています。現代の監督の中でも、特に自他の作品や社会に対して、鋭く洞察を向けて映画を作られている。言い換えれば、深田さんの作品は、どこか私たちの社会の精巧にできた写し絵になっているのですね。『文學界』の作家論でも書いたことですが、作品に共通しているのは、まず物語にある共同体やコミュニティが設定されていて、その外部からある種「異物」のような例外者が侵入することで起こる悲喜劇です。そして彼らが共同体の秩序や習慣を撹乱し、その場が変容していくという主題が繰り返し描かれています。そこが、私が深田さんの作品に非常に現代性があると思うところなのですが、いかがでしょうか。

(続きは、blueprint book storeにて発売中の『明るい映画、暗い映画 21世紀のスクリーン革命』blueprint book store限定付録でお読みください)

■書籍情報
『明るい映画、暗い映画 21世紀のスクリーン革命』
発売中
著者:渡邉大輔
ISBN 978-4-909852-19-9 C0074
仕様:四六判/327ページ
定価:2,750円(本体2,500円+税)
出版社:株式会社blueprint
Amazonリンク:こちら
blueprint book store:https://blueprintbookstore.com/items/613ec54247a53464eff127b9
※blueprint book store限定付録として、深田晃司監督と渡邉大輔の対談を収めた小冊子付き。

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