『リクはよわくない』にはアニメの快楽性が備わっている 動きのない一枚絵の持つ力強さ

『リクはよわくない』一枚絵の持つ力強さ

 作中では犬の多頭飼いのあるある話も描かれている。年長の先に家に来た犬から食事を食べ始める年功序列の風習は、群れ社会を形成し序列を大切にするとされる犬らしい描写のひとつだった。

 原作を務めた坂上忍は自身の体験を基にしているが、5才の「ぼく」の行動にもその失敗と経験が反映されているようだ。初めはリクもほかの犬と同じように育てようとしてしまうが、それが合わないリクは日に日に弱ってしまう。そのため、エサに野菜を入れてあげたり、あるいは散歩をする際も抱っこをしてあげるなど、様々な工夫を重ねることで交流を深めていく様子が描かれている。その描写1つ1つからも「犬が好き」という心がとても伝わってくる。

 犬を飼うという行為は、ただ可愛がるということで成立するものではない。エサや散歩、糞尿の世話などの日々のケアに加えて、やがては訪れてしまう悲しい別れにも向き合わねばならない。好きであればあるほど、長年連れ添ったペットを失ってしまったことによる、重いペットロスになってしまったという人も多くいるだろう。

 そういった人々の気持ちに寄り添いながらも、それでも愛する家族たちの共に過ごした時間は変わらない。その幸せな時間を一緒に作ってきてくれたことに、改めて感謝の気持ちを与えてくれて、愛犬との日々を振り返るきっかけを与えてくれて、挫けそうな時は支えてくれる。そんな犬を愛する人々の心に深く残るであろう作品だ。

■公開情報
『リクはよわくない』
公開中
声の出演:森川智之、杉田智和、森久保祥太郎、花江夏樹、浅野真澄、松本梨香
監督:荒川眞嗣
脚本:水月秋
原作:『リクはよわくない』作:坂上忍/絵:くっきー!(インプレス刊)
アニメ制作:勝鬨スタジオ/十文字
音響制作:チャンスイン
音響監督:サイトウユウ
配給:東京テアトル/チャンスイン
製作幹事:MMDGP/チャンスイン
(c)坂上忍/くっきー!/インプレス/MMDGP/リクはよわくない製作委員会
公式サイト:https://riku-movie.com

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