『Free!』なぜ大ヒットアニメに? 美麗な演出と丁寧に描いたキャラの成長
現在公開中の『劇場版 Free!-the Final Stroke-』前編。青春を水泳に投影した少年達の物語が展開される本作は、これまでにTVアニメが第3期、劇場版が4作制作されている。その“最終章”となる今作。テレビシリーズで「世界で戦う!」と幼なじみの松岡凛と橘真琴に誓った七瀬遙は、いよいよ夢の場所・シドニーへ。水と向き合う熱き姿が描かれる。
『Free!』シリーズは、京都アニメーションが主催する「京都アニメーション大賞」第2回で奨励賞を受賞し、2013年にKAエスマ文庫から発売されたライトノベル『ハイ☆スピード!』(おおじこうじ著)が原案。『涼宮ハルヒの憂鬱』や『けいおん!』など大ヒット作を世に送り続けている京アニが制作しており、水泳という難しい描写を、丁寧な作画と美麗な演出で魅せている。
本作はプールを中心として“水”をメインに描かれるシーンが多いのだが、アニメ制作において「水の表現は難しい」と言われ続けてきた。水しぶき、流れ、動きに「水ってこうだよね」という“正解”がないからだ。おそらくだが、これを絵に落とし込むうえで、京アニにはさまざまな研究や苦労があったのではないだろうか。実際に出来上がったものを見てもらうとわかる通り、「自然」かつ「美しい」描写に驚かされた。
テレビシリーズ全ての第1話において、遙の第一声が「水は生きている」だった。これは、物語の大筋に関わっているとともに、制作陣の思いも投影されたセリフなのではないだろうか。
また、キャラクターの心理描写もこまやかで、全編通して各キャラクターの人間性を深く掘り下げていることも、視聴者を世界観に惹き込む要因となっている。遙は水や泳ぐことに特別な思いを抱いていたが、かつてのチームメイトである凛との衝突で、水泳から離れてしまっていた。しかし、同じくチームメイトで幼なじみの葉月渚との再会をきっかけに、岩鳶高校で水泳部を設立。新たに竜ヶ崎怜を迎え、メドレーリレーを通じて再び“仲間との絆”に触れたことにより、東京、そして世界へと泳ぎ出すことになる。