『青天を衝け』小林薫が体現した“とっさま”の美しい生き様 大河では異例のリモート演出も

『青天を衝け』とっさまの美しい生き様

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)第30回「渋沢栄一の父」では、栄一(吉沢亮)の父・市郎右衛門(小林薫)が危篤に。栄一はその訃報を聞き、血洗島へと急ぐ。

 これまで農作をはじめ、養蚕、藍玉の製造・販売などに幅広く携わり、勤勉な働きぶりで家業を盛り立ててきた市郎右衛門。栄一には商いとは何かを、その厳しくも温かな眼差しで教え、彼が攘夷運動を企てた際にも、決して否定せずに、世を変えたいという志を理解し、生涯にわたって息子を見守ってきた。

 特に栄一が新政府の役人として働き始めてからは、少々過剰な敬いの気持ちと父親としての威厳ある立場に揺れるお茶目な一面も見せていた。そして、田舎で生まれ育った栄一が、慶喜(草なぎ剛)のもとで朝臣として忠義を尽くしたことも市郎右衛門にとっては誇りであった。

「俺は、もう心残りはねぇ。俺は、この渋沢栄一の父だ」
「栄一ありがとう」

 最期の言葉に栄一は「うそだい……」と涙を流しながら最後まで強情っぱりを見せる。どんなに栄一が偉くなっても結局は父と息子。そんな本来の関係性に戻った、束の間のひと時だった。

 栄一が市郎右衛門の偉大さを改めて実感するのは、父が息を引き取ってから。「なんと美しい生き方だ」ーー栄一のようなドラマティックな生き方の一方で、市郎右衛門は雨の日も、風の日も、暑い日差しが照りつける日も、畑を耕し、藍やお蚕様を売って、村のみんなとともに実直に働いてきたのだ。

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