『おかえりモネ』時間が止まったままの新次と亮 わだかまりを抱えた親子の行く末は

『おかえりモネ』新次と亮の行く末は

 その後新次に二つの転機が訪れた。一つは百音が予測した台風の上陸に備えて、龍己(藤竜也)の船の移動を耕治(内野聖陽)に頼まれたこと。「船やられんの黙って見てらんねぇのはおめぇの方だろ」という耕治の言葉に後押しされて、新次は5年ぶりに船に乗ったのだ。これには亮の顔からも眩いばかりの笑顔が見られて、及川親子にとって確実に希望の光が差し込んだ瞬間だったことがわかる。もう一つは、美波の死亡届への押印を高齢の義母に頼まれたことだ。あまりに残酷なこの申し出だが、義母もこの先自分がどうなるかわからない中、娘の存在を行方不明のまま有耶無耶にし弔いもせずに残しておくのは心残りなのだろう。「俺があの判子を押したら、俺がこの手で美波を…」と言う新次の魂の叫びがあまりにいたたまれなかった。一方で「これに判子を押したら亮を楽にしてあげられるのかな、美波にも喜ばれるよな」とこぼす新次も、どちらも彼の正直な気持ちだからこそより一層その間で揺れ動く想いを自分ではどうすることもできず苦しいのだろう。“わからずや”ではなく、全てわかっているからこそ辛いのだ。それは新次にも亮にも2人共に言えることだ。

 こんな大事な局面にあっても、直接2人で会話することをどうしても避けてしまう及川親子の間の埋まらぬ溝はいまだ緊張感のあるものだし、2人には孤独感と諦めがずっとへばりついて纏わりつく。

 そんな中にあっても、何とか止まってしまった時を進めようとしている亮は中古の船を購入しようとお金を貯めているのだと明かしていた。第22週「嵐の気仙沼」では、亮が船に乗っている間に悪天候となり戻れなくなってしまう様子が描かれるらしい。亮を失いそうになって初めて新次は自身の“今”ある大切なものに気づき、本当の意味で再起する姿が見られるのかもしれない。結局のところ、亮を救えるのは新次しかいないだろう。どうかこの先及川親子が互いに自分自身のことを許し合い、自分の非力さを咎め続ける悪循環から離れられますように。2人が心の中に溜まりに溜まった澱を思いっきり吐き出せますように。片方だけでなく、2人の時間をまた動かせますように。彼ら2人が一緒に船に乗り漁に出る姿がいつかきっと見られますように。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる