「助けてもらってばかりでもいい」 百音の言葉に刻まれた『おかえりモネ』が描くテーマ

『おかえりモネ』百音がたどり着いた答え

 未知(蒔田彩珠)、龍己(藤竜也)、あかり(伊東蒼)、そして亜哉子(鈴木京香)。『おかえりモネ』(NHK総合)第21週「胸に秘めた思い」は、それぞれが抱えていた苦悩を話し始める。百音(清原果耶)にとっての相談相手は菅波(坂口健太郎)であるが、今回は百音が彼らの聞き手側に回っているのも特徴的だ。やりたいことが見つからない、自分の好きなことが分からないーーかつての百音を彷彿とさせるあかりの登場は、今の百音の立ち位置と成長を浮かび上がらせている。

 第21週には観ていて胸が苦しくなるようなシーンもあったが、だからこそ週のラストである第105話には、胸にじんわりと沁みる温かなセリフがいくつもあった。その横文字がTwitterのトレンドにも上がった龍己の「思い出すのが笑い顔だけなんて、それファンタスティックじゃないか」。雅代(竹下景子)の七回忌に、亜哉子は耕治(内野聖陽)との結婚を考えたのは雅代に会ったからだと明かす。その愛情深い性格で、民宿を営み、島の里親制度として、学校や家庭になじめない子供たちを預かっていた雅代。亜哉子の話を聞き、龍己は「会いたくなっちゃったな」と仏壇の雅代の写真を見つめる。

 「ファンタスティック」で思い出すのは、以前に龍己が雅代を呼んでいた「俺のハニー」。今も変わらない妻への愛情を感じさせるとともに、その言葉のチョイスからは、若い頃にぶいぶい言わせていた名残をひしひしと感じさせる。だが、龍己の場合は嫌味がない。そのユーモア溢れる言葉選びもそうだが、ここぞというタイミングでかます洞察力がある。百音たち同級生の話題がだんだんと悪い酒に進んでいる時に、亜哉子へと合図を送ったのは、隣の部屋で聞き耳を立てていた龍己だった。

 また、回想で再び雅代が口にする「女が自分の好きな仕事選べるなんて、この辺じゃなかなかできることじゃないのよ」は、永浦水産を継ぐか、誘われている東京の大学に行って研究を続けるかで揺れる未知に響く言葉でもある。

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